撮影/西股 総生(以下同)

(城郭・戦国史研究家:西股 総生)

城に行くなら犬山城と名古屋城のセットで

 夏休みに旅行に行ったら城を見てみたい。城歩きを始めてみたい。でも、どこから手をつけたらよいものか。せっかく行くなら、確実に満足感の得られる城を。そんな人にお薦めなのが、犬山城と名古屋城のセットです。

 もともと名古屋は日本の真ん中らへんにあって、首都圏からも関西圏からも、中部圏からも行きやすいですし、公共交通機関も発達していて便利です。そんな日本のほぼ真ん中にあって、交通の便も良く、お城の初心者でも間違いなく楽しめるのが犬山城と名古屋城。いうなれば、〝はずさない〟鉄板セットです。

本丸に入ると正面に天守が鎮座している。

見どころは国宝の天守

 まずは、犬山城。この城の見どころは、何といっても国宝の天守です。江戸時代からそのまま残っている本物の天守は、日本全国にたった12か所。城界の超選抜メンバー、「12神将」ともいうべき現存天守の一つが、犬山にはあるのです。

 坂道を登って本丸に入ると、正面に3重の天守がそびえています。たいがいの観光客は、まっすく進んで天守の中に入ります。でも、それではもったいない。まずはじっくり眺めてみましょう。「400年も前からこの場所に、この姿で立っている木造建築なんだ」という実感が、じわーっと心にしみ入ってきます。

 どのアングルから眺めたら、いちばんカッコイイか。スマホやカメラで写真を撮りながら、本丸の中を歩いて「推しアングル」を探してみましょう。そうして眺めているうちに、気がつくことや、疑問に感じることが、あるはずです。

本丸の中を歩きながら、天守が映えるアングルを探してみた。

 たとえば、この天守はなぜか小顔な印象を受けます。あ、最上階にバルコニーが付いていて、歩いてみたい。ふーん、壁は白と黒のツートンなんだ。右手前の所が、なぜか出っ張っているぞ。

 おや、最上階の窓だけ、四角ではなく釣り鐘形をしています。なぜ? バルコニー下にヒゲのような小屋根があって、そこにも長方形の窓が見えます。あそこにも、部屋があるのかな? などなど。

立木がけっこうジャマなので、一部だけ切り取ってみるのもよい。

 天守の中に入ってみましょう。気がついたこと、疑問に思ったことを、一つずつ自分の目と足で確かめてみるのです。世の中のたいがいの人は、天守のような木造建築の平面形は、長方形だと思っています。でも、天守の一階を一回りしてみると、この建物がとんでもない平面形をしていることがわかります。

 さきほど撮った写真を見ながら、外から見て気になった箇所が、どういう仕組みになっているのか、確かめてみます。そうして2階・3階と上っていけば、天守の秘密が少しずつわかってくるはず。

天守内部の小部屋。どこにあるのか探してみよう。

 最上階からは木曽川の眺めが広がります。でも、ここで注意点が2つ! まず、バルコニーの手すりが低いので、気を抜いてはいけません。もう一つ、釣り鐘形の窓がどんな構造になっているか、忘れずに確認しましょう。

最上階のバルコニー。手すりが腰の高さしかないので、気をつけて。

 さて。天守の内部を堪能したら、おさらいのつもりでもう一度、外側から天守を眺めてみましょう。このとき、載せている石垣もよく見て、写真に撮っておきましょう。

 朝から動いて午前中に犬山城を見れば、戻って午後は名古屋城に行くこともできます。もちろん、駅までゆるゆる歩きながら、おいしいものを探したりして、城下町を楽しむのもアリですね。(つづく)

天守を400年間支えてきた石垣。いろいろな色の石が混じっている。

 

☆お知らせ☆
旅行会社iTSの企画で9月23日(金祝)・24日(土)、筆者(西股)が犬山城&名古屋城をご案内します。ビギナーさん大歓迎。この記事の謎解き・答え合わせをしながら、城を見るコツを1からていねいにご教授します。

詳くしはiTSのHPへ
→ https://i-travel-square.tokyo/inuyama_nagoya/