台湾軍将兵の栄誉を称える演説を行った台湾の蔡英文総統(資料写真、2022年6月28日、写真:ロイター/アフロ)

(馬 克我:日本在住中国人ライター)

 台湾で生まれ育った高清愿氏は、1967年に「統一(トンイー)」という名の企業を設立。のちに日清と提携し、インスタント麺の生産を開始した。

 1992年、統一は中国市場でインスタント麺を発売し大人気となった。「統一」という企業名も、商品が中国で歓迎された理由の一つだった。中国では政府から民間レベルに至るまで、台湾に対する態度は一貫して「統一は必須」である。

『三国志演義』にみる中国人の歴史観

 中国の明時代の小説『三国志演義』の冒頭は、次のような言葉で始まっている。

「そもそも天下の大勢は、分裂が長ければ必ず統一され、統一が長ければ必ず分裂するものである。周末、七国に分かれて争ったが、全て秦に併合され、秦の滅亡後、楚と漢に分かれて争ったが、これまた漢に併合された。漢王朝は、高祖劉邦が白蛇を斬って旗あげしたのを皮切りに、天下を統合した」(井波律子訳)

 もし「天下統一」という目標がなければ、三国の争いも意味のないものであり、歴史的変化の基盤にある原動力も失う。これが中国古代より存在する歴史観である。

 三国に続く、隋、唐の時代は「最も偉大な時代であった」と今でも中国人に褒め称えられている。中国人からみて偉大な時代は他にもある。秦、漢の時代だ。「漢族」の名称は、漢時代の「漢」が由来となっている。

 隋、唐、そして秦、漢という偉大な時代は、いずれも「統一」されていた時代であった。皇帝にとって最大の業績とされるのは統一である。そして、一般人からすると、統一とは戦争の終結、平和な暮らしの到来を意味する。そのため歴史書において、「統一」は常に肯定的に描かれている。

 秦の始皇帝から今日に至る2200年余りの中国の歴史の中で、「中国は統一されるべき」という価値観、目標は、中国人の心に深く刻み込まれた烙印であり、中国人の中で最大公約数となっている。