北朝鮮が2017年以来7度目の核実験を行うのではないかという報道が流れている。日韓を歴訪している米国のバイデン大統領は、記者団の質問に対して「北朝鮮のあらゆる行動を想定し備えているから心配していない」と余裕の発言をしたが、その裏で北朝鮮は核弾頭の生産を着々と進めている。すでに40個以上を保有し、毎年6個以上を製造する能力があるとされている。
防衛省の分析によると、6度目の実験で核兵器の小型化・弾頭化をすでに実現している。日本を射程に収めるノドンやスカッドERといった弾道ミサイルを保有していることも踏まえれば、技術的な観点からは、北朝鮮はこれらの弾道ミサイルに核兵器を搭載して日本を攻撃する能力をすでに保有しているとみられる。
にもかかわらず、新たに核実験を行う目的は、弾頭をさらに小型化し、ひとつの弾道ミサイルに複数の弾頭を搭載する多目標弾頭(MIRV)化を目指しているのではないかと思われる。
金正恩が危惧する「カダフィ大佐のような最期」
なぜ北朝鮮が核兵器にこだわるのか──。北朝鮮国営『朝鮮中央通信』(KCNA)が2016年1月の論説で「強力な核抑止力は、外国からの攻撃を阻止するのに最大の力を発揮する宝刀であることを、歴史は証明している」と述べたように、北朝鮮は核抑止力の確保を目標としている。
北朝鮮が核兵器の開発を強力に推し進めてきたのは、米国の脅威を感じていた金日成(金正恩の祖父)が決意したことであることと、金正恩がリビアの最高指導者・カダフィ大佐のような運命に直面するかもしれないことを危惧していたからだった。
2003年12月にカダフィ大佐は米国と核廃棄することを約束し、無条件査察を受け入れた。核兵器開発用の遠心分離機の部品は、米国テネシー州オークリッジの施設に搬送され、査察と資機材搬送は2004年3月には完了した。
しかしカダフィ大佐は2011年8月、欧米の空爆支援を受けた反体制派の蜂起で政権を追われる。そして同年10月、出身地のシルト近郊でなぶり殺しに近い形で惨殺される。これは金正恩から見れば最悪の最期である。自分がカダフィ大佐のように、米国の支援により民衆蜂起が起こり死を迎えることだけは避けたいはずだ。