一方、これを面白くなく思っているのが、政権を奪われ野党に転がり落ちた「共に民主党」の面々だ。彼らもこの米韓首脳会談が選挙に及ぼす影響をよく知っている。そのため、この効果をできる限り目立たせない努力を重ねてきた。代表的な行為は「バイデン大統領は韓国訪問中に文在寅前大統領に会う」という噂を広め、尹大統領の手柄に“便乗”しようとしたことだ。

「前大統領」の文在寅氏(写真:ロイター/アフロ)

「未確定」情報を積極的にリークした大統領府報道官

 4月、バイデン大統領の韓国訪問日程が確定すると、韓国ではバイデン大統領の訪韓日程中に文在寅前大統領に会うという話が流れ、複数のメディアがこれを既成事実のように報道した。関連内容が初めて報道されたのは4月16日、『中央日報』の<バイデン氏、訪日前に韓国大統領と会う…「退任」した文氏との会談も>というタイトルの記事だった。

 同紙はバイデン米大統領が訪日に先立ち、20日から韓国を訪問して尹大統領と首脳会談を行うという日程を報道した後、次のように付け加えた。

<バイデン大統領は韓米首脳会談を終えた後、退任した文在寅大統領と会う日程も調整中だ。バイデン大統領の訪韓時には文大統領は「前大統領」という立場だが、韓国に対するバイデン大統領の格別な友誼を強調するレベルで会談の日程が進められているという。この日程が実現する場合、退任後に慶尚南道梁山(ヤンサン)の私邸にいる文大統領がソウルを訪問すると予想される>

 当時はまだ文在寅氏が現職大統領である。そして、この情報を電話インタビューなどを通じてメディアに積極的に流していたのが、朴炅美(パク・キョンミ)大統領府報道官だという。

 さらに4月28日には、大統領府は担当記者団にバイデン-文在寅の会合を既成事実化して説明した。匿名の大統領府関係者の発言を引用した複数の報道では、「在任中、友情と信頼、尊敬が格別だった文大統領とバイデン大統領との具体的な会合日程を協議中だ」、「会談はホワイトハウスの要請によって推進されている」、「米韓同盟をさらに堅固にし、朝鮮半島平和プロセスの進展のために傾けた努力と最近の朝鮮半島情勢などをテーマに話を交わすものと見られる」などと「バイデン-文在寅会談」が確定しているかのように伝えられた。