暗号資産を誕生させたブロックチェーン。しかし、この技術の波及は金融分野だけにとどまらない。新たなデジタル技術がカルチャーの世界をどのように変えるのか──元日銀局長の山岡浩巳氏が、ロイヤリティバンク取締役社長兼CTOの五十嵐清氏に聞いた(前編)。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第83回。

 ブロックチェーン(分散型台帳技術)とは、取引などの記録を誰かが一元管理するのではなく、インターネットにつながったネットワークの参加者が共有し、取引履歴を鎖(チェーン)のようにつないで維持する仕組みです。

 この技術は、金融の世界では大きな関心を集め、最初に暗号資産(当初は仮想通貨)という形で応用されました。これは、権利の連続という意味で、まずは、転々と人の手から手に渡っていくお金の分野への応用が最も考えやすかったからです。

 とはいえ、ブロックチェーンは応用の可能性が高い技術で、応用をお金の分野にとどめていてはその潜在力が十分発揮できないだろうと、私は前職(日本銀行)の時代から思っていました。今回は、アート、音楽、漫画、アニメといったカルチャー/エンターテインメントの分野でブロックチェーンのノウハウ・専門技術を活かして活躍されている五十嵐太清さんに、カルチャー分野における新たなデジタル技術の可能性を伺います。

五十嵐 太清(いがらし・たいせい)氏
2019年会津大学大学院卒。在学中にソラミツ株式会社にてHyperledger/Irohaの設計・開発、カンボジア国立銀行と共同でカンボジアのデジタル通貨の開発を行う。現在は、株式会社ロイヤリティバンクにてブロックチェーンを用いた権利管理、印税分配を行うアーキテクチャの研究、開発を行っている。

山岡 まず、五十嵐さんが社長を務めている株式会社ロイヤリティバンクが、現在どのような取り組みをされているかをご紹介ください。