(川島 博之:ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問)
上海のロックダウンは新型コロナ対策だけが目的ではない。現在、中国では密かにそんなことが囁かれている。
都市部に住む人々はPCR検査が義務付けられ、陰性証明がないと出歩けない。中国人は背番号を持っているが、陰性証明はその番号に紐づけられおり、スマホで管理されている。公共の場所などに立ち入る際には、スマホに入れた陰性証明を見せなければならない。そのためスマホを常に持ち歩く必要があるが、そうするとGPSによって当局に居場所を把握されてしまう。
中国人にプライバシーはない。当局がその気になれば、ターゲットとした人物の浮気現場に乗り込んで弱みを握ることだってできる。中国はこれまでも監視社会だったが、ここに来てそれは強化された。一層息苦しい社会になった。
格差が固定されてしまった中国社会
管理強化は秋の党大会をにらんだものだ。習近平は秋の大会で中国共産党のトップを続投しようとしている。だが党内には反対の声が多数ある。共産党の大物長老である朱鎔基が反対の声を米紙に公表したくらいだ。党内では習近平派と反習近平派が暗闘を繰り返している。このことはよく知られているが、この暗闘は上海のロックダウンと無関係ではない。