(姫田 小夏:ジャーナリスト)
中国・上海市で市民を幽閉する厳しいロックダウンが続いている。そこでは、ゼロコロナ政策という“奇策”のもと、およそ現代社会とは思えない非科学的で不条理な行動規制が実施されている。その光景は、毛沢東による文化大革命すら想起させる。
心も身体も危機的状況
上海市でどれほど厳しいロックダウンが行われているのか――。その状況を語るのは、夫が上海市に赴任中だという鈴木萌絵さん(仮名)だ。鈴木さんは開口一番、「夫のメンタルが心配になってきました」と明かす。
鈴木さんの夫は明るい性格で精神的にもタフだそうだが、幽閉生活が20日を超える頃から顔色が悪くなってきたという。言葉にも張りがなくなり、「このままだと鬱(うつ)になってしまうのでは」と萌絵さんは心配する。
上海市在住者は誰もが居室内に隔離され、陽性反応が出ようものなら即座に集中隔離施設に強制収容される。食料品の配給は不定期で、蓄えが底をつく市民も出てきている。上海市出身の大学教授は「上海市民は精神面でかなりやられている」と指摘する。