3月24日に行われたスコットランド代表とポーランド代表とのサッカー国際親善試合で、ウクライナへ国旗を掲げ戦争反対を訴えたポーランドのファン(写真:AP/アフロ)

 ロシアの攻撃により甚大な被害を受けているウクライナ政府が、世界中から人道支援のための寄付金を募るために斬新な手法を取っている。現在進行形の戦禍を世界のアーティストの手でアート化された作品をNFT化、それをオンラインNFTミュージアム「META HISTORY」(https://metahistory.gallery/)で展示、販売しているのだ。

 META HISTORYには、ウクライナの被害をリアルタイムで見たアーティストたちが、そこから得たインスピレーションをアート化した作品が並んでいる。3月末にオープンし、初日だけで50万ドル(約6100万円)の寄付が集まったという。

 またウクライナ政府は、戦争直後から暗号資産のビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のアドレスを公開し、3月14日には暗号資産大手取引所のFTXとブロックチェーン企業のエバーステークと提携して、暗号資産で寄付を受け付ける専門サイト「エイド・フォー・ウクライナ(Aid for Ukraina)」を開設している。こうした暗号資産を活用した寄付金の募集で、4月初旬の時点では78億円が集まっている。

東欧のIT大国

 これらの事例からもうかがえるのは、有事に際してのウクライナ政府のIT対応能力の高さだ。

 最近までウクライナで生活していたITコンサルタントの柴田裕史氏は、ウクライナのIT事情についてこう解説する。

「ウクライナは東欧のIT大国なのです。それは、ゼレンスキー氏が大統領に就任するとすぐにミハイロ・フェドロフ副首相兼デジタル改革担当大臣を置き、IT大国を目標に掲げたことでもわかります。現在のウクライナはお年寄りから子供までスマホを使いこなすほど、国民全体がITに精通しています。

 また日本ではまだ一般になじみの薄い暗号資産やNFTも相当程度、浸透しています。ウクライナの通貨・フリヴニャは価値が低いので、暗号資産に変えて持つ人が多いのもその理由ですが。街角の両替屋などで、簡単に暗号資産にかえることができます。

 ゼレンスキー大統領は3月に暗号資産を合法化する法律に署名しましたし、暗号資産はウクライナにとってもはや欠かせないものになっています。ビットコイン(BTC)やテザー(USDT)は誰もが持っています」