ロシアの衰退は習近平国家主席にとって願ったり叶ったりか(写真:AP/アフロ)

※前編「対北朝鮮制裁を堂々と破る国連常任理事国の中国が対露軍事支援に踏み切る必然」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69692)から読む

(岩田 太郎:在米ジャーナリスト)

 中国共産党の機関紙、人民日報が運営する「人民網日本語版」が、ロシアのウクライナ侵略を奇貨として利益をむさぼる米国を痛烈に批判している。

 4月7日付記事「ロシア産エネルギー禁輸で『確実に儲ける』米国の思惑」と題された論評で、中国共産党は「ロシア・ウクライナ紛争を作り出した米国は、利益を得続けるための作戦を早くからしっかりと立ててきた」と主張。「対露制裁の圧力を振りかざしながら、エネルギー・安全保障面で欧州への束縛を強化することで、対露制裁の負の影響の代償を同盟国に払わせると同時に、自国は戦争で大儲け」する米国を難じた。

 この批判は、主に米国と欧州の離間を狙ったプロパガンダではあるが、鋭いところを突いている。侵略されるウクライナを支援する正義を掲げる米国だが、我田引水で自国の軍産複合体やエネルギー産業が潤うと同時に、その覇権的影響力が再拡大し、漁夫の利を得ていることは事実である。

 もっとも、戦争で漁夫の利を得ることを利益相反、不道徳、利己主義と規定することで、中国共産党は自らの首を絞める結果になっている。ウクライナ戦争の戦況が悪化する中、一連のプーチン大統領の自壊的な行動が中国を経済的・覇権的に利する構造が出現し、それを中国が積極的に利用している現実が明確になりつつあるからだ。

 さらに、人民日報が米国の不純な動機を攻撃することで、かえって中露の同盟的な協力関係が浮き彫りになった。結果として、中国共産党が最も世界の目から隠したい自国の利益相反や覇権への野望が浮き彫りになっていることは、誠に皮肉だ。

 問い詰められても口を割らないが、勝手に話させると自ら隠すべき秘密をペラペラと喋ってしまうという、ことわざで言うところの「語るに落ちる」という失敗を、中国共産党自身がその米国批判で見事にやらかしているのだ。その矛盾を見ていこう。