ハンター・バイデン氏(2021年1月19日、写真:ロイター/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 バイデン大統領の次男ハンター・バイデン氏に対する脱税や不正資金洗浄の容疑での刑事事件捜査が最近になって活発に進んでいることが、米国の多数のメディアの報道で明らかとなった。

 そうしたメディアのなかには、これまで「ハンター事件」には否定的で「共和党側の捏造」とまで断じていたところもある。民主党寄りのメディアも、ハンター事件の取り上げ方が変化してきた。また、この捜査が長引くことは、バイデン政権や民主党にとっても11月の中間選挙に悪影響を及ぼしかねない。

CNN、ニューヨーク・タイムズも報じる

 CNNテレビは3月30日の放送で、「ハンター・バイデンへの連邦当局の捜査が活発化している」と伝えた。その内容は「ハンター・バイデン氏のビジネス活動での脱税、マネーロンダリング(不正資金洗浄)、ロビー規制法違反などの容疑に関する司法省による刑事事件捜査がここ数週間で進展した」という趣旨だった。「ハンター氏の犯罪行為が裏づけられたわけではないが、捜査の進展が顕著だ」という。

 ほぼ同時に、ニューヨーク・タイムズも同じ趣旨のニュース記事を掲載した。同紙やCNNは、米国の国内政治の報道や論評では一貫して民主党支持のスタンスをとり、ハンター氏の不正疑惑が表面化した際も、「共和党側の宣伝工作」「トランプ陣営関係者による捏造」といった一部の見解を紹介し、疑惑の内容を詳しく伝えることはなかった。それが今回は、少なくとも「疑惑」の内容と捜査の進展を報じるようになった。