準大手ゼネコン、西松建設による違法献金事件・・・。政界は揺れに揺れている。民主党代表・小沢一郎の公設第1秘書が逮捕された後、「火の手」は自民党にも及び始めた。捜査の進展次第では、小沢は代表辞任だけではなく、民主党離党あるいは議員辞職さえ余儀なくされるかもしれない。(敬称略)

 3月3日、東京地検特捜部が小沢の公設第1秘書、大久保隆規容疑者を政治資金規正法違反の疑いで逮捕するや否や、永田町は激震に見舞われた。

 大久保は西松建設からの企業献金と知りながら、小沢の資金管理団体の政治資金報告書に西松OBが代表を務めていた2つのダミー団体から献金を受けたように装い、「虚偽記載」を行った疑いが持たれている。

 その献金額は年間2500万円に上るとみられる。ダミー団体を通じ、西松が複数の与野党幹部に企業献金を重ねていた実態は知れ渡っていたが、小沢への献金額は突出している。もっとも、捜査の手は経済産業相・二階俊博ら自民党側にも伸びようとしており、政権与党も戦々恐々としている状況だ。

浅はか「国策捜査」批判

小沢代表「辞めるべき」が57%、毎日新聞

秘書逮捕でも「問題なし」会見〔AFPBB News

 事件発覚当初、民主党幹事長の鳩山由紀夫ら執行部は「国策捜査」と決め付け、東京地検特捜部の捜査を厳しく批判した。

 だが、検察への全面対決姿勢を示し、世論に小沢の正当性をアピールしようという民主党執行部の戦術は、あまりにも浅はかだった。動揺のあまり正常な判断ができず、小沢を狙い撃ちにする首相官邸の「陰謀」と勝手に解釈したのだ。国民に対して「検察=悪、民主党=善」の説得力はほとんどないのだから、余計なコメントは必要なかった。

 3月8日、鳩山は当初の小沢全面擁護から軌道修正。NHK番組で「(小沢の)進退問題が浮上しないと言い切るつもりはない。当然、新たな事実が判明すれば、新たな展開になると思う」と語った。小沢の主張と食い違う新たな事実関係が判明すれば、小沢の代表辞任もあり得るとの考えを明確にしたのだ。

 民主党幹部の1人は「この事件は『小沢事務所VS検察』であり、『民主党VS検察』にしてはいけない」と主張。副代表の前原誠司も「検察の在り方に疑義を抱かせるような物言いは、一般論としてすべきではない」と指摘した。

 「何の問題もない」という小沢の主張を額面通り受け取り、その判断ミスが鳩山ら民主党執行部の検察批判につながった。これでは小沢と一連托生となり、党全体が重大なダメージを被りかねない。このため、鳩山ら幹部は「露骨な検察批判を控えるべきだ」との認識で一致したのだ。

「説明責任」果たさず

 小沢の言い分を聞いてみよう。小沢は3月4日の記者会見で、公設秘書の逮捕について「何ら問題はない。わたし自身何らやましいことはない」と強調、献金の違法性や自らの辞任を否定した。「衆院選が取り沙汰されているこの時点で異例の捜査が行われたことは、政治的にも法律的にも不公正な国家権力の行使だ」と検察を批判したが、それでも「国策捜査」という言葉はさすがに避けた。

 もっとも、共産党委員長の志位和夫が指摘したように、その会見は「説明責任を果たしたとは到底言えない」内容だ。