がんの治療は、たいてい突然始まる。患者はがんと診断されてから、ものすごいスピードで体の一部を取るような外科手術や抗がん剤治療などの決断、覚悟をし、長期戦では治療法や方針について選択しなければならないこともある。それが現時点で最も効果が期待でき、安全性も確立した「標準治療」であっても、自分に合っているのか、治療で感じる苦痛は当たり前なのかなど不安になる患者、家族などの身近な人は多い。主治医を信頼していても診断や治療選択がこれでいいのか、他の医師に聞いてみたいと思った時に利用できるのがセカンドオピニオンだ。
セカンドオピニオンは現在の主治医のもとで治療を続けることを前提に、違う医療機関の医師に「第2の意見」を求めることだ。保険適用外の自費負担で受けることができ、専門医がこれまでの検査や診断、治療の経過を踏まえて、現在の治療や選択について意見を述べ、相談に乗ってくれる。
国立がん研究センター中央病院では、新型コロナウイルス感染症の終息が見込めない中で2021年2月15日よりセカンドオピニオンのオンライン提供を希少がん等に限定しつつ開始した。実際にどのように行われているのか、そのメリットなどについて呼吸器内科外来医長の後藤悌医師に聞いた。
遠方の患者がセカンドオピニオンを受けやすく
――オンライン・セカンドオピニオンが導入されて約1年になりますが、どのような人がオンラインを利用しているのでしょうか。
後藤悌医師(以下、後藤) 2021年11月末までの約半年間でオンラインによるセカンドオピニオンは164件ありました(セカンドオピニオン全体では2740件)。受けられた方へのアンケートでは、新型コロナウイルス感染症への心配から東京に来たくないというより、純粋に遠方におられる方達が来院するのが大変だからという理由が多く、首都圏近郊の方はこれまでどおり対面でのセカンドオピニオンを受けられる方がほとんどです。現在のところ、オンラインでは原則として希少がんに限定しているため当院全体の数とは純粋な比較にはなりませんが、従来通りの対面の方が多いのが現状です。
――もともと国立がん研究センター中央病院では、どのような患者さんがセカンドオピニオンを受けられるのでしょうか。
後藤 全般的には患者さんご自身が現在受けている治療以外のものがないか探す時、治療方針が変更になる時の確認や選択肢の検討、これまでの治療の確認をしたい方もおられますし、今後の見通しを主治医とは違う視点で専門家から教えてほしいという方もいます。当院のセカンドオピニオンでは1時間用意していて、そもそもがん治療とは何か、あなたのがんはどういうものか、今後はどういうことが予想されるのか、治療にはどんな方法があるかといった一般論をじっくりとお話しすることが多いですね。また、地方で治療を受けている患者さんの家族が「東京の大きな病院では他の治療があるのか」と、セカンドオピニオンを求めて来られることも多くあります。
通常の診察ではそこまで時間をとってお話しすることが難しいため、病気や治療についてじっくり聞きたいというニーズがあり、患者さんや家族など関係者の納得感や満足度がアップするのなら機会は多いほどいいでしょうから、私は積極的にセカンドオピニオンを利用してもらいたいと考えています。実際、治療法が変わる度に、何度もセカンドオピニオンを受けに来られる患者さんもおられます。