ウクライナ軍が親ロシア派武装集団の支配する東部地域をドローン攻撃した昨年10月26日以降、ロシアはウクライナ国境に部隊や戦車、重火器を集結させている。極東から移動してきた師団を含め、国境付近に集まるロシア兵は12万7000人に達しているとされる。
ロシアの動きに対して、ウクライナ政府は応戦体制の整備を急ぐとともに、米国や北大西洋条約機構(NATO)に支援を要請した。これを受け、第一陣として米軍8500人、NATO軍5000人の派兵準備を整えている。
また、1月26日にはNATOの東方拡大中止を求めるロシアの要求を文書で正式に拒否したとブリンケン国務長官は明らかにした。翌27日には、バイデン大統領がウクライナをロシアが侵攻した際の経済制裁案を発表している。
ただ、NATO内での英米と独仏の足並みは乱れている。2月4日まで実施される米軍とNATO海軍の地中海での演習も含め、どれほどプーチン大統領にプレッシャーを与えているのか疑問視されている。
メディアの報道内容も、米英メディアを中心とした(日本も含む)ロシア軍のウクライナ侵攻が秒読みに入ったかのような論調と、いまだ交渉の余地が残されている雰囲気を示唆する独仏を始めとする欧州メディアの論調は対照的だ。
本稿では、筆者が米国防省や米政府、軍関係者などから聞いた話も参考として現在のウクライナ情勢を敷衍(ふえん)したい。
結論的に言えば、一触即発の危機に陥ってから2カ月が経過した現在、「ロシア対ウクライナ・米・欧州諸国」というにらみ合いの構図は今後しばらく続きそうな情勢だ。
ただ、プーチン大統領がただちにウクライナ侵攻を開始する可能性は低い。むしろ中間選挙を意識せざるを得ないバイデン大統領との交渉を有利に進め、ウクライナのNATO加盟と中距離核ミサイルの撤去にこぎつけようとしている印象である。