臨時国会閉会を受けて記者会見した岸田首相(2021年12月21日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

 新型コロナウイルスの「オミクロン株」に対する岸田文雄首相の方針は、世界にも類をみない。まず11月末に全世界から1カ月間の外国人入国禁止を打ち出し、12月末にも延長するという。さらに感染者だけではなく、濃厚接触者の14日間隔離を打ち出した。

「手遅れよりやりすぎの方がまし」

 これは政治的には賢明である。緊急事態宣言には特措法の制約があるが、外国人の入国禁止は閣議決定だけでできる。迷惑するのは外国人だけで、日本人の帰国は認めるので、国内からの反発は少ない。

 濃厚接触者の隔離には法的根拠がないので、強制力のない「要請」という形で出しているが、濃厚接触者の定義がはっきりしない。厚労省の定義では「感染者と1メートル以内かつ15分以上の接触があった者」だったが、オミクロン株では同じ航空機に乗っていた乗客全員が濃厚接触者と判定され、1000人以上が隔離された。

 大阪や京都では市中感染が発見され、もう水際対策の意味はなくなったが、岸田首相はこう述べた。

 未知のウイルスだからこそ、リソースを集中投入する。危機のときにはトゥーレイト(遅過ぎ)トゥースモール(小さ過ぎ)より、拙速、やりすぎのほうがましであるという考え方に基づいて取り組んでいる。

 これも政治的には賢明である。国民は不確実性を嫌うので、岸田首相のように「最悪の場合を想定して最大の対策を取る」といえば、誰も反対しない。