中国が望む米空母撃破のシナリオは、次のようなものであろう。
●エリント衛星を打ち上げ、各高度の軌道に配置された位置で、米空母のレーダー信号を受信し、その位置を特定する。
●そのデータが、通信中継衛星、地上局を経由して対艦弾道ミサイル(ASBM)部隊に送られる。
●そして、ASBMを空母に向けて発射し、飛翔軌道を変更しながら命中させる。
このポイントは、「洋上の米空母を発見すること」と「対艦弾道ミサイルを移動する米空母に命中させること」の2つだ。
しかし、これは極めて難しい。今回は、米空母を発見し、位置を特定することに焦点を当てて考察する。
1.米空母を発見・特定:海洋監視の3段階
中国は、米空母を発見し位置を特定する海洋監視システムを完成させるため、エリント衛星・画像衛星・レーダー衛星からなるYogan(ヤオガン)偵察衛星シリーズを相次いで打ち上げてきた。
だが、中国の電子偵察の歴史は短く、米国よりも40年以上も遅れている。
一方、米軍情報機関は、エリント信号の研究を長期間実施してきており、エリントの情報戦を知り尽くしている。
その米軍軍艦は、当然、レーダー信号を有事と機材チェック以外には出さない。周辺の船舶と衝突しないための捜索レーダーには、民間仕様のものを使用している。
米軍艦は、基本的に、軍艦であると識別されるエリント信号を出さないのだ。
このような状況の中で、海洋を監視して、米空母を発見するためには、3つの段階がある。
第1段階は、偵察機と衛星を使ってエリント信号を収集すること。
第2段階は、中国が米軍軍艦のレーダー信号(エリント信号)を解析して、その信号と米軍各艦とを特定すること。
第3段階は、空母の位置を特定して、この情報をリアルタイムにミサイル部隊に送付することだ。