英グラスゴーで開催されたCOP26は閉幕したが、気候変動に対する各国の足並みは揃っていない。その間にも、日々悪化する地球環境──。写真家として極地における地球温暖化の惨状を目の当たりにしてきた半田也寸志氏が、今地球で起きていることを綴った最終話。
◎第1話:「広がる花畑に唖然、北極で見た温暖化の現実」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68040)
◎第2話:「氷河流出に伴う海の“淡水化”が地球環境に与える恐ろしい影響」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68041)
◎第3話:「新規に95カ所の石炭火力発電所の建設を進める中国と地球の未来」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68042)
(半田也寸志:写真家)
化石燃料からの脱却を最も推進しているはずの欧州でさえ、天候状況によって大きく左右される自然エネルギーだけでは需要を満たせず、いまだバックアップ電源として化石燃料に大きく依存せざるを得ない状況にあります。
現状のまま脱炭素産業の推進に急速に舵を切れば、エネルギー価格のさらなる高騰と、それが招くインフレはますます長期化することは間違いありません。このような状況で、少なくても短中期的には化石燃料より割高となる自然エネルギーの普及に、産業や人々はいったいどれほど耐えられるのでしょうか。
それだけでなく非正規雇用の多いインドの石炭採掘者やアメリカのシェールガスといった化石燃料産業、雇用の裾野が広い日本やドイツの自動車産業からも大量の失業者が出てくるでしょう。まさに、「不都合な真実」です。
また、脱炭素に向けたインフラ整備に伴う工事用車輌や建設資材、脱炭素製品の生産過程で吐き出されるCO2も無視できません。今後、脱炭素に向けた取り組みが加速すれば、排出量は今まで以上に積み上がるしょう。
問題はそれだけではありません。脱炭素産業に不可欠な希少金属鉱物資源の争奪戦は土壌や水質汚染、労働環境の劣悪さの問題もなおざりにされたまま煽られ、仮にその採掘地が海洋にも向かえば、次は海洋破壊にもつながりかねません。寿命が尽きたそれらの製品の廃棄方法についても、まだろくに議論すらされていないという現実もあります。
電極とシリコンを強力に固めたソーラーパネルはリサイクルが難しい上、耐用年数も30年ほどのため、2040年には日本だけでも80万トン超という膨大な量の廃棄パネルが生じる見込みです。それにもかかわらず、廃棄パネルの処理対策は議論すらろくにされておらず、現状では土中に埋めるしか手がないと言われています。
セレンやカドミウム、鉛といった有害物質が多く含まれるパネルは廃棄コストも高く、不法投棄が横行すればそれがもたらす土壌汚染の影響は計りしれません。
安価を売りにソーラーパネル製造世界シェアの大半を握る中国は、内モンゴル自治区のクブチ砂漠に建設した巨大なダラト・ソーラー発電所の稼動を前に、「中国中の砂漠を全てソーラーパネルで覆い尽くす」と、その野心を豪語しました。サウジアラビアなどの中東諸国も、日本などからの出資を得てこれに追随しようとしていますが、その先にある廃棄処理問題については何の言及もしていません。
EVに搭載されるバッテリーも普及に関して解決しなくてはならない問題が山積しています。