英グラスゴーで開催されたCOP26は閉幕したが、気候変動に対する各国の足並みは揃っていない。その間にも、日々悪化する地球環境──。写真家として極地における地球温暖化の惨状を目の当たりにしてきた半田也寸志氏が、今地球で起きていることを綴った第3話。
◎第1話:「広がる花畑に唖然、北極で見た温暖化の現実」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68040)
◎第2話:「氷河流出に伴う海の“淡水化”が地球環境に与える恐ろしい影響」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68041)
(半田也寸志:写真家)
単なる努力目標になってしまったCOP26の合意文書
2021年11月、コロナ対策で1年延期されていた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)がスコットランドのグラスゴーで開催されました。
会場の外では、グレタ・トゥンベリ氏を中心に、各国首脳の気候変動対策に対する偽善に不満を持つ若い群衆が世界中から集まり、「COP26はグリーンウオッシュの祭典(※WhitewashのWhiteをGreenに置き換えた造語で、環境に配慮しているように見せて真実を隠蔽しているという意味)」と糾弾する中での開催です。
今回のCOP26には、中国、ロシア、サウジアラビア、ブラジルなど、気候変動対策において最も肝心な国々の首脳が出席しませんでした。パリ協定に復帰したバイデン米大統領は、特に中露首脳の欠席を厳しく批判しましたが、それでも世界120カ国が参加し、それぞれのカーボンニュートラルをコミットしました。
例えば、炭素排出量1位の中国は、文書を通じてではありますが、従来目標を変えることなく、2060年までのカーボンニュートラルに言及。排出量3位のインドも、モディ首相が自らの口で2070年までのカーボンニュートラル達成をコミットしました。それ以外にも、23カ国が石炭火力発電の廃止を宣言しています。
また会議中盤に、これまで気候変動問題を米中摩擦のカードにしていた中国が、突然これまでの態度を翻して米国に歩み寄り、問題解決に向けた共同宣言を出したのは世界に驚きを与えました。
中国の閣僚代表は出席を拒みましたが、同国を含む100カ国以上が2030年までのメタン排出量の30%削減に合意した点を取り上げ、COP26は大きな進展があったという評価を下す声もありました。
ただ、電力不足に悩む中国は、現在も石炭採掘量を記録的に増やしており、COP26が押し進める石炭火力発電所の段階的廃止案には反対の立場を崩していません。
事実、会議は終盤になって紛糾。会期を1日延長させてでも何とか成果文書をまとめようとする議長国に対し、排出量1位の中国と3位のインドが閉幕直前になって「石炭火力発電所の段階的廃止」という文書案を拒否しました。結局、成果文書の表現は「排出削減措置が取られていない石炭火力発電の段階的削減」と大幅に弱められたものになってしまいました。
これは同会議の開幕宣言で、「我々には時間がない」と発言した議長国、英ジョンソン首相の面目を完全に潰すものです。改めて世界の分断と、気候変動対策の早期解決に向けた取り組みへの困難さを浮き彫りにました。
英国のシャーマ議長が声を詰まらせながら読み上げた成果文書では、「産業革命からの気温上昇を1.5度に抑える努力をする」という文言は維持されたものの、「段階的廃止」と「段階的削減」の間には大きな隔たりがあります。同文書は当初目標から大幅に後退した、単なる努力目標となってしまいました。