(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
新型コロナウイルスが新たに変異した「オミクロン株」への警戒感が高まっている。
南アフリカらWHO(世界保健機関)に最初に報告されたのが11月24日だった。そのわずか2日後の26日には、WHOがVOC(懸念すべき変異株)に指定。世界各国に急速に警戒感が広まると、日本でも30日から全世界を対象に外国人の入国を禁止した。それでもすでに国内では2例の感染が確認されている。
それだけ迅速に対応がとられてはいるが、実際のところこれまでより感染力が強いのか、重症化しやすいのか、既存のワクチンが効くのかどうか、はっきりした病態はわかっていない。
重症化リスクは高くない?
これまでであれば、病状の変化や感染状況をみて、ウイルスが変異していることを突き止めていたものが、今回はウイルスそのものを調べることによって変異が確認できたことから、懸念が一気に高まった。
オミクロン株は、ウイルスが細胞への侵入に必要な表面の突起である「スパイクタンパク質」に約30カ所の変異が認められている。それだけに感染しやすいのではないか、との予測が生まれる。だが、それだけでは感染や病態に必ずしも関連性があるとは言えないことも事実だ。関連がある場合も、関連がない場合も、あるいは薄い場合もある。人体への影響を知るには、疫学調査を待つ必要があり、1カ月はかかる見通しだ。
いまのところ、最初に報告のあがった南アフリカでは、報告からわずか1週間で感染者数が4.7倍に急増し、同国の国立感染症研究所によると、10月は感染例の92%がデルタ株だったものが、11月は74%をオミクロン株が占めたとされ、急速にオミクロン株に置き換わっているという。その一方で、重症化のリスクが少ないことも報じられ、既存のワクチンの効果を指摘する声もある。