EU、台湾との関係強化へ
欧州議会は10月21日、欧州連合(EU)に対し台湾との関係強化を求める報告書を圧倒的多数で可決したと発表した。
欧州議会において、EUと台湾の関係に関する報告書が可決されたのは今回が初めてである。採決は20日夜に行われ、賛成580(約86%)、反対26(約4%)、棄権66(約10%)だった。
この際、賛成は反中、反対は親中、棄権は中立ないしは対中配慮と読み取ることもでき、その意味で、EUの立法機関である欧州議会が反中姿勢を鮮明にしたことは、今後の国際社会に大きな影響を及ぼすことになろう。
この報告書には、3つのポイントがある。
その一つは、EU駐台湾出先機関の名称を、これまでの「欧州経済貿易弁事処(オフィス)」から「EU駐台湾弁事処(オフィス)」に変更するよう求めていることである。
注目点は、新名称には従来なかった「台湾」が盛り込まれていることと、EU台湾関係を経済貿易に限らず、安全保障などを含めたより広範な交流を可能とする包括的な名称に変更していると解釈できる点である。
2つ目は、EUと台湾の2者間投資協定(BIA)締結に向けた影響評価など準備作業への早急な着手を要求していることである。
既知の通り、EUと中国は、7年間の交渉を経て2020年12月に包括的投資協定に合意した。
しかし、新疆ウイグル自治区での人権侵害を巡りEUが中国当局者を制裁したことに対抗し、中国がEUの政治家や外交組織、シンクタンクなどに報復制裁を科した。
それをきっかけに、EUは同投資協定の批准手続きを凍結し、現在、解決の目途は立っていない。
今般のEUと台湾の投資協定締結に向けての動きは、中国に失望し、同じ普遍的価値観を共有する台湾を取引相手に選択したとの意味合いを持つものと言えよう。
3つ目は、中国が台湾への軍事的な圧力を強めていることに深刻な懸念を表明し、中国と台湾の緊張緩和や台湾の民主主義を守るため、より積極的に取り組むよう求めていることである。
EUのボレル外交安全保障上級代表は9月、EU初の「インド太平洋戦略」を発表し、中国の海洋進出をけん制するほか、台湾との関係強化を打ち出した。
今般の報告書は、安全保障面で重要度を増すインド太平洋で影響力を拡大する中国を睨み、何らかの形でEUのコミットメントを強化する重要な切っ掛けになる可能性がある。