(福島 香織:ジャーナリスト)

 先日、習近平政権のエンタメ芸能界規制に対する認識をめぐってネット上の2つの論評が話題となった。

 1つが極左ブロガー、李光満の論評で、もう1つが「環球時報」主筆の愛国・愛党言論人である胡錫進による李光満論評への反駁論評だ(注:中国の「左翼」はいわゆる新左派、私有財産と自由市場経済を結果の不平等の最大原因として、財産の公有化や市場の国家管理などを求める国家主義的勢力を意味する)。

 李光満は、昨年(2020年)のフィンテック企業アントグループの上場停止事件からエンタメ芸能界規制強化に至るまでの一連の政策は「まさに革命、社会主義の本質への回帰」だと論評。この文章が、人民日報、新華社、環球時報を含む中国主要紙の電子版に一斉に転載された。

 その数日後、胡錫進は「李光満の論評は誤読で誤誘導だ」という短い原稿を自分の微博アカウントで投稿した。

 この一連の出来事はきわめて奇妙な印象をチャイナウォッチャーたちに与えた。

「革命」という言葉を使って檄を飛ばす

 習近平が掲げている共同富裕政策と、目下急速に進められている大手民営企業に対する規制強化、芸能・エンタメ界、ゲーム業界への規制強化、課外学習・オンライン学習産業を丸ごと潰すような教育改革・・・。こうした動きをひっくるめて習近平が目指しているのは改革開放からの逆走路線であり、毛沢東回帰、社会主義の初心への回帰であり、「富裕層を打倒せよ」という階級闘争への誘導であり、一種の革命、文化大革命2.0ではないか、という論はチャイナウォッチャーの間ではよく指摘され、私もそういう見方に沿って今の中国で起きている現象を分析してきた。