(福島 香織:ジャーナリスト)
中国では不動産バブルが崩壊するとき、こういう状況がおきるのだなあ、と改めて震撼した。
中国最大の民営デベロッパー「中国恒大集団」の一部理財商品(資産運用商品)の償還が9月8日に期日通りに行われず、さらに9月13日に、広東省当局が、恒大地産が行っている不動産プロジェクトに対して完成予定の不動産を抵当とする融資申請を認めない旨を通達した、との噂が流れた。これらのことが引き金となって、恒大集団総本部がある深圳、支社のある上海や重慶、四川省成都などの十数の都市で、数十人から数百人の理財商品購入者や個人投資家、住宅購入予定者がつめかけたのだ。
ネットに流れる動画や写真をみると、群衆は、元金返金や建設再開を求めて、怒り、泣き叫び、企業関係者に詰め寄ったり、ガードマンともみ合ったり、興奮して失神したりしていた。ビルから飛び降りようとする社員もいた。恒大社員の中には、企業ノルマのために自分で自社の理財商品を購入していた者も多くいたのだ。年利7%をうたい文句にしていた理財商品は、もはや元本すら返ってくる可能性も薄い。まさに絶望と阿鼻叫喚の「取り付け騒ぎ」だ。こうした騒ぎが、これから全国に波及するかもしれない、と国内外のチャイナウォッチャーたちが固唾をのんで見守っている。
3つのレッドラインを越えて「兵糧攻め」に
中国はこの数年、ずっと「不動産バブル」圧縮政策を、手を変え品を変えて行い続けてきた。それでもなかなか思うように不動産価格が下がらず、ついに昨年(2020年)に不動産融資制限政策「三道紅線」(3本のレッドライン)という「兵糧攻め」策を打ち出した。3本のレッドラインとは、「(1)資産負債比率70%超、(2)純負債資本倍率100%超、(3)手元資金の短期債務倍率が100%を割り込む不動産企業」に対しては銀行からの融資を制限するという政策である。