韓国社会では大小様々な“賄賂”が横行している(写真:CavanImages/イメージマート)

(石井 友加里:韓日・日韓翻訳家)

 韓国の学校では、保護者が担任の教師に缶コーヒー1本も差し入れできない。不法だからだ。

 年度始めや5月15日の「先生の日」、秋夕や正月などの名節が近づくと話題になる法律がある。不正請託禁止法だ。通称「金英蘭(キム・ヨンラン)法」とも呼ばれるこの法律は、政治家や法曹界、教育界の公職者に対する不当な根回しと賄賂の受け渡しを厳しく禁止している。

 施行から4年経って、韓国国民は慣れてきたはずだが、今でもネット掲示板にはこのような質問が並ぶ。

「学校の先生にカーネーションもあげてはいけないの?」
「幼稚園の先生もだめ?」
「保育園の扱いは?」

 法律制定の背景を思わずにはいられない。癒着とカネがものを言う韓国社会を色濃く反映しているのである。

 不正請託禁止法は2015年3月に公布され、翌2016年9月28日に施行された。国民権益委員会の金英蘭(キム・ヨンラン)前委員長が公職に就く人間の規律を確立するために起案し、制定させたことから別名「金英蘭法」と呼ばれる。

 当初、原案には公職者が私的な利害関係を有する職務に関わらないという内容を含む「利益衝突防止法案」があったが、基準が曖昧だとして見送られた経緯がある。

 金英蘭法は、政治家や公務員、ジャーナリスト、公立や私立学校の教職員などに対する「不正勧誘の禁止」と「金品の授受の禁止」を定めている。不正勧誘とは、特別な取り計らいである。

 法律制定前、韓国では公職者の不正と民間との癒着、過度な接待が問題になっていた。特に贈賄・収賄が問題視されていたのは法曹界だ。