2020年10月24日に砂防会館別館(東京都千代田区)で開催された「全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会」(写真:アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 4月2日に開かれた米国、日本、韓国の安全保障担当高官の会議では、北朝鮮による日本人拉致事件の解決に向けた国際協力がこれまでになく小さな比重しか与えられなかった。

 米国のバイデン政権の対応は、トランプ前政権と比べると明らかに消極的だった。北朝鮮への対処に関して、米国はこれまでとは異なる姿勢をみせつつあるようだ。

単に「拉致問題」と記されているだけ

 米国のジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官、日本の北村滋国家安全保障局長、韓国の徐薫国家安保室長の三者は4月2日、米国の首都ワシントンに近いメリーランド州アナポリスの米海軍士官学校で、三国間の安全保障協議に臨んだ。北朝鮮情勢やインド太平洋情勢への対処を主題とする協議が行われ、その結果をまとめた共同声明が会談直後に発表された。

 これまで日本と米国との安保協議では、北朝鮮工作員による日本人拉致事件の解決が最大ともいえる比重を与えられていた。だが今回の声明では、その重要性や緊急性を後退させる流れが顕著となった。