ベトナム・ハノイの道路(資料写真、Pixabay)

 法令違反の低賃金と重労働、実習生の犯罪や失踪・・・。「外国人技能実習制度」を巡るトラブルが後を絶たない。ルポライター安田峰俊氏の著書『「低度」外国人人材 移民焼き畑国家、日本』(角川書店)によると、帰国した実習生が同胞を「喰う」側に回るという、むごたらしい実態もあるという。ウソと搾取の“破綻した制度”、外国人技能実習制度の知られざる闇を、同書から一部抜粋・再編集してお届けする(JBpress)。

「真面目にルールを守るほうが損をする」

「低度」外国人人材 移民焼き畑国家、日本』(安田 峰俊著、角川書店)

「日本は人手が足りない、発展途上国は労働者を送り出したがっている。需給のバランスは合っているし、外国人技能実習制度の理念それ自体は間違っていなかったと思う。ただし実態としては『よくない』。制度設計が個々の関係者の良心頼りで、国際貢献や『人づくり』といったタテマエは完全に名目上のものになっている。破綻した制度だと感じますね」

 2019年6月にハノイ市内で会った、現地の送り出し機関で勤務する伊沢(仮名)はそう言い切った。

 伊沢は大学卒業後に関西地方の会社に就職したが激務に疲れ、「ベトナムとフィリピンのどっちでもいいけれど」海外で働きたくなって日本を離れた。取材時点で33歳で、現地への渡航後に知り合ったベトナム人の妻と結ばれ、子どもが1人いる。彼は疑問を抱きながらも技能実習生業界で働き続けており、5年間のベトナム生活で4社の送り出し機関を渡り歩いてきた。日本語ができる人間の職場として、技能実習生の送り出し機関は需要が多いのだ。

「送り出し機関から『実習生のレクリエーション代』といった名目で、本来は技能実習法で禁止されている10万~15万円程度のキックバックを受け取る監理団体がいまだに存在します。逆に送り出し機関の側からキックバックを申し出ている例もありますね。現在の制度のもとで、この業界をクリーンにするのは無理ですよ。真面目にルールを守るほうが損をする風潮が根強すぎる」