(姫田 小夏:ジャーナリスト)
コロナ禍に見舞われた世界経済は、「中国の独り勝ち」といわれている。だが、実はベトナム経済がそれを上回る。
東南アジア主要6カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)のなかでプラス成長を果たしたのはベトナムだけ。2020年のGDP成長率は2.9%と、中国の2.3%や台湾の2.5%を上回る世界最高水準を叩き出した。
早期発見と早期隔離でコロナを封じ込める
その背景には、ベトナムが実施した短期決戦型の新型コロナ感染抑え込みがある。2020年、アジア諸国では旧正月(1月22~29日)の期間中に新型コロナの感染が蔓延したが、ベトナムでは初の症例が認められた1月23日から、いち早く臨戦態勢に入った。
ベトナム政府は1月30日に、感染予防・管理のための「コロナ感染対策国家管理委員会」と呼ばれる作業部会を設立した。旧正月明けには全国の教育施設を対象に休校措置を採ったほか、2月上旬には南部の最大都市ホーチミンではイベントを禁止、商業ビルではマスク未着用者の入館を禁止するなど、各種措置を矢継ぎ早に実施した。
2月11日に北部のヴィンフック省で11人のコロナ陽性者が確認されると、周辺は封鎖され、1万1000人の村民が隔離された。4月1日からは15日間のソーシャルディスタンス規制が全国展開され、5月10日までのほぼ1カ月の間、新規感染者の確認はゼロとなった。