EY連載:大変革時代における組織・人事マネジメントの新潮流(第28回)
新型コロナ禍で人やモノの流れが様変わりする中、働き方改革やビジネスモデルの変革に取り組む企業も多いことと思います。多くの日本企業がさまざまな経営改革に着手しており、「改革の目的を予定通りに達成するのは容易ではない」と感じている経営者が多いのではないでしょうか。この度、EY Japan ピープル・アドバイザリー・サービス(以下、EY)が産業能率大学 経営学部 小出琢磨教授(経営学博士)の支援を受け実施した調査では、過去3~5年間に開始された経営改革のうち、完全に成功した改革は19%にとどまることが判明しました。では、この「19%の成功した改革チーム」は、成功に導くために何を行ったのでしょうか?
調査概要
現在、多くの日本企業が大きな転換期を迎えています。経済や社会の急激な変化は、企業の経営改革を加速させますが、経営改革を「成功」へと導くことは容易でなく、企業はその成功方法を模索しています。このような企業を支援すべく、EYでは「経営改革の成功要因」を明確にすることを目的とした市場調査を、日本において行いました。
本調査では250以上の企業から得た回答をもとに、さまざまな範囲(既存事業改善・拡大、新規事業立ち上げなど)や、規模(全グループ会社、1社単体、複数部門、単体部門など)の経営改革の日本特有の状況について分析を行っています。
調査結果は、改革がより複雑化しており、改革の導入を加速させ、成功させるためには、「専属のチェンジマネジメント要員と活動」が鍵であることを反映しています。ここでの「チェンジマネジメント」とは、改革において「ヒト」と「組織」に着目した、改革をスムーズに進めるための手法です。経営層から一般社員に至るまで改革の受容度を測定し、改革によるヒト/組織・業務・システムへの影響を詳細に分析して、改革を成功に導き、定着させるための施策を実行していきます。
日本における経営改革の傾向
企業が経営改革を実施する目的はさまざまですが、本調査によると、過去5~7年間において最も多く実施されたのは「既存事業の拡大・強化」(65%)、2番目は「経営効率の向上」(59%)でした。
また、最も困難な種類の改革に挙げられたものには、「新規事業開発・既存事業の大幅な方針転換」(33%)と「部門横断的テーマ」(27%)が含まれました。
一方で、将来計画している、または、未定だが実施したいと考える経営改革は、「新規事業開発、既存事業の大幅な方針転換」(78%)や、「部門横断的テーマ」(76%)であり、現行との違いが見られました。
将来目指しているこれらの改革は、関係者が多く、複雑で、難易度が高いという特徴があります。
経営改革を推し進めることは容易ではないと考えられていましたが、やはり成功率は高いとは言えず、「当初予定していた目的・期間・予算をすべて達成した」という「完全なる成功」となったのはわずか「19%」という結果になりました。また、45%は、「目的・期間・予算のいずれも達成できなかった」ということが判明しました。