民間調査機関である一般財団法人労務行政研究所は2021年1月26日、緊急事態宣言再発令下における、企業の対応に関する調査の結果を発表した。調査期間は2021年1月14日~15日、1月15日時点で緊急事態宣言下にある1都2府8県にある企業の人事担当者234名から回答を得た。これにより、 新型コロナウイルス感染症拡大を受けてこれまでに企業が実施した対応や、今回の緊急事態宣言のおける変更点などが明らかとなった。

2020年12月末時点での感染防止対策は「手指消毒の奨励」や「マスク着用」など

 政府は今年1月7日に「東京」、「神奈川」、「埼玉」、「千葉」の1都3県、1月13日に「大阪」、「京都」、「兵庫」、「愛知」、「岐阜」、「栃木」、「福岡」の7府県を対象に、緊急事態宣言を再発令。そして2月2日には、栃木のみ2月7日に宣言を解除し、それ以外の10都府県は3月7日まで延長すると発表した。このような状況下で、企業はどのような対応に取り組んでいるのだろうか。

 はじめに、2020年12月末時点での「新型コロナウイルス感染防止に向けた継続的な取り組み」を尋ねた。すると、最も多かったのは「手洗い、アルコールによる手指消毒の励行」で99.1%、以下「事業所内でのマスク着用の義務づけ」(93.2%)、「咳エチケットの励行」(91.5%)、「在宅勤務」(89.7%)、「時差出勤」(85.9%)などと続いた。

緊急事態宣言の再発令で変更や拡充した取り組みは「在宅勤務」が最多

 また、今回の緊急事態宣言の再発令にともない、対象となる区域の事業者には「出勤者数の7割削減」を目標として、テレワークなどの対応が求められている。そこで、「これまでの取り組みを変更あるいは拡充、または今後予定しているもの」を尋ねた。その結果、「在宅勤務」が最も多く44%、以下「あてはまるものはない」(31.6%)、「国内出張の制限」(29.1%)、「私的なイベント、飲み会等への参加自粛要請」(26.9%)などとなった。


 さらに、「企業規模別」と「産業(製造業・非製造業)」別に結果を見ると、企業規模が大きくなるほど回答率が高くなったのは、「在宅勤務」、「国内出張の制限」、「3密を避ける会議・打ち合わせルールの徹底」、「手洗い、アルコールによる手指消毒の励行」、「事業所内でのマスク着用の義務づけ」の5項目だった。また、「旅行の自粛要請」も1,000人以上は12.3%となり、他の規模よりも割合が高い。

新たに行う取り組みは「なし」が最多に

 また、緊急事態宣言再発令を受け「新たに取り組んでいるものや、取り組む予定のあるもの」を尋ねると、従業員規模や産業に関わらず最も多かったのは「あてはまるものはない」で、全体では64.5%となった。これまでの感染対策により、既に十分な対応が取られていることがうかがえる。

 一方、新たに取り組んだ施策をみると「終業時刻以降の勤務抑制」(7.7%)、「私的なイベント、飲み会等への参加自粛要請」(4.3%)、「国内出張の制限」(3.8%)などが多い。さらに、今回の緊急事態宣言で「20時以降の外出自粛」が要請されたことから、「終業時刻以降の勤務抑制」の施策として、「退勤時刻は原則20時まで」や「20時までに帰宅できる時間の退社」など、20時を意識した取り組みも見られた。

在宅勤務の「実施頻度」を増やす企業が多い傾向に

 続いて、導入している「在宅勤務で見直した内容」を尋ねた。すると、最も多かったのは「回数や日数などの実施頻度」で85.4%に。以下、「適用対象者」(25.2%)、「機器の貸与」(20.4%)と続いた。実施頻度についての具体的な取り組みは、「実施日数の増加」、「日数制限の撤廃」、「適用対象者の拡大」、「在宅勤務推奨から原則在宅勤務へ変更」、「原則として在宅勤務とし、新たに出社時に上司の承認が必要とした」など、出勤者の7割削減を意識した対応が挙げられた。

出勤者数の削減目標を定める企業はおよそ5割

 さらに、「出勤者数の削減目標(通常の出勤者数を100とした場合の削減割合)の有無」を尋ねると、「定めている」は49.6%で、全体の約半数にとどまることがわかった。従業員規模が大きくなるほど、削減目標を設定している企業割合も高く、産業別では非製造業が52.6%と、製造業の45.4%より7.2%高くなった。

「出勤者の7割以上の削減」を目標とする企業は全体のおよそ5割に

 最後に、「出勤者数の削減に対し、目標値を定めている」とした企業に具体的な目標値を尋ねた。すると、規模別合計では「70%台」が46.6%と最も多く、以下「50%台」(21.6%)、「30%台」(9.5%)と続いた。政府が掲げる「7割削減」以上を目標値としている企業は全体の56.9%、目標値の平均は59.7%となった。


 緊急事態宣言の再発令にともない、すでに実施されている対策に加え、対象地域では「在宅勤務の頻度を増やす」等の対応を迫られる企業も多いようだ。今回は宣言に加わらなかった地域でも、今回の対応を参考に、柔軟な体制が取れるよう準備しておきたい。

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HRプロ編集部

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