宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、iDeCoの価格変動型商品のメンテナンスがテーマ。景気変動に合わせて適切な商品を選ぶことで、年金の運用効率が高まります。
iDeCoの商品の組み合わせは自己責任
【質問】
年取った時のためお金に困らんようiDeCoしているじゃけど、毎月積立しちょるだけで本当に増えるっちゃろうか? どうせ、国の年金不足の押し付けじゃろ。なんもせんで、増えれば文句はないけど、本当に心配でしょうがないね。小田さんは自分でわかってるからいいけど、ホントのところ教えて。何か自分ですることやアドバイスあれば教えて?
前回に引き続き、iDeCo(個人型確定拠出年金)の何で?にお答えしていきます。
今回の「毎月積立するだけで本当に増えるの?」という質問ですが、答えはイエス、ノーどちらも当てはまるでしょう。ですが、きちんと手当をすればイエスになります。
それでは理由について話していきますね。
そもそもiDeCoの始まりは、米国の私的企業年金の一種である確定拠出年金のうち、「内国歳入法」という法律の401条k項の要件を満たした401(k)プランです。これを「日本版401k」としてスタートしました。この日本版401kの目的はあくまで企業側の経営ニーズから、従業員への福利厚生として企業が負担していた退職金給付の運用リスクを、従業員に一部転嫁することにありました。既存の厚生年金基金制度、税制適格退職年金制度などの企業年金の確定給付制度(給付される年金額があらかじめ決まっている年金)はこれまでどおり原則としてありますが、国や企業は並行して日本版401k、現在の企業型確定拠出年金の利用も促してきました。
日本の低金利政策によって確定給付型が運用難にさらされている状況をみると、従業員が自分で運用する確定拠出年金に移行したことは、結果的に良かったといえます。
ただ、ここで考えてみてください。確定給付年金の制度では企業の責任の元で運用が行われていたものの、実際には、企業は「運用の責任者」に任せていたのです。そう、企業は確定給付年金であっても(企業内の)運用責任者に責任を転嫁できたのです。私が今までのマネー相談室で「初心者の資産運用は、長い間ほったらかして忘れることによって、いつの間にか利益が出るようにするもの」と言ってきましたが、その「運用」は、あくまでプロが運用している商品(投資信託など)を指しているのをご理解ください。
悪い言い方をすれば、iDeCoは国が個人に責任転嫁した商品です。
運用商品の長期積立手法に、定期的に同じ金額ずつ積み立てていく「ドル・コスト平均法」があります。景気の低迷期の後に回復期を迎えたときには大きな効果が出るのですが、低迷期が長く続くと、効果はなかなか表れません。プロの運用責任者であれば、それぞれの運用商品について銘柄などの組み換えをして長期積立の効果を高めようとしますが、iDeCoは「自分でやる」が原則です。商品自体はプロ運用ですが、投資信託などの組み合わせは自己責任です。だからメンテナンスはしなければならないし、やらないと損をすることもあるのです。「何もしなければお金は増えるわけがありません」。それがiDeCoの性格です。