日頃からお互いに信頼関係があるか

 さらに、マタハラとなる上司の言動や行動、指揮命令の中でも、次のようなものには、とくに注意が必要だ。

・仕事をふってもらえない
・雑用ばかりさせられる

 上司からすると、これは「体調に配慮して業務を軽減した」ということかもしれない。しかし、本人と話し合いもせず、一方的にこのような状態になっていたとしたら、気持ちとしては「配慮」でも、行為としては「マタハラ」になってしまう。

 マタハラの中で最も多いと言われているのが、「皮肉や嫌味を言われる」だ。正当な権利である産休や育休を申請、業務の軽減を申し出ただけで「妊婦様」と揶揄されることもあるという。このような「言葉でのいやがらせ」については、同僚であれば「たびたび言う」ことがマタハラの要件になっているが、上司の場合は「一度きりの発言でもアウト」になる可能性が高い。

 対象者が妊娠している、していないという以前に、相手が受け止めやすく、業務の改善に結びつけられるような注意の仕方をしているだろうか。普段から、部下がミスをすると、つい皮肉や嫌味を言ってしまうという自覚があれば、特に気をつける必要がある。

 セクハラ・パワハラについては、かなり防止策が浸透してきた面もあるが、マタハラについては、問題とされるようになってから日も浅く、妊婦側からすると「職場に迷惑をかけている」という意識があり、表面化しにくいのが現状だ。体調に関しても、多少具合が悪くても本人からはなかなか言い出せず、逆に、不本意に業務内容を変更させられても、すぐその場で「そんな必要はありません。今のところ、体調は大丈夫です」と言えない状態であると、「上司のひとりよがり=マタハラ」が発生しやすくなるといえる。

 基本的なことではあるが、マタハラに限らず、すべてのハラスメントを防止するために、日頃から部下とのコミュニケーションをしっかりととれるよう、工夫してはいかがだろうか。

李怜香(り れいか)
メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー
http://yhlee.org

著者プロフィール

HRプロ編集部

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