(鵜飼 秀徳:ジャーナリスト、一般社団法人良いお寺研究会代表理事)
お寺で新型コロナウイルスが出た場合、どうなるのか。2021年1月、集団感染が明らかになり、宗教活動の停止を余儀なくされている寺院がある。福岡市博多区の光薫寺だ。
光薫寺では1月初旬に住職、小林信翠さん(49)を含めて8人の感染者を出した。多くの仏教行事や葬儀を務めなければならない寺で、ひとたび感染者を出せば、檀信徒に影響が出る。小林さんは、積極的に情報を発信すると同時に、寺院のBCP(事業継続計画)策定の必要性を訴えている。
小林さんは感染以降、SNSや寺院のホームページなどで、コロナ感染の事実を包み隠さず明らかにしている。宗教者は本来、職業柄、誰にも気がねする必要がない立場にあるが、実際には世間体を気にして公表しない寺院もある。小林さんは、「コロナ感染者にたいする差別が広がっていることを危惧しています。コロナ感染症はインフルエンザ同様、誰もが罹患する可能性のある病気です。コロナに罹っても差別を受けることなく、また、差別から生じる隠蔽などが起きない寛容な社会をつくりたいと考えて、あえて寺院名や本名を明らかにすることにしました」と語る。
小林さんが住職を務める光薫寺は、博多駅から徒歩20分ほどにある。鉄筋コンクリート造りの本堂を構え、モダンな佇まいだ。北部九州一円に別院を7箇所抱え、信者は1000軒以上にも上る県内でも有数の大きな寺院だ。
小林さんは常日頃から、「地域社会への貢献」をモットーに、子供祭りや寺子屋、ヨガ教室などをはじめ、いじめや引きこもりの相談などを実施している。筆者とは、しばしば情報交換をする関係性で、昨秋には「ポストコロナ時代の供養のあり方」というテーマで、小林さんが運営する勉強会に出講させていただいた。
小林さんが体の不調を訴えたのは1月6日のこと。頭痛と筋肉痛、さらには悪寒と暑さを同時に感じるような状態になった。