3.バイデン政権で対北戦略は変わるのか

(1)バイデン政権との交渉の前提は、北が既にミサイルを保有していること

 これまでとの交渉戦略の違いは何か。北がすでに、核やICBMを保有していることだ。

 2017年の実験から3年が経過していることからすでに水爆の開発にも成功しているとみられる。

 ウランもプルトニウムも精製できる核物質製造施設を保有し、ウラン濃縮施設は実際に稼働している。

 北は、この施設についての米国の情報は認めていない。寧辺のプルトニウムの施設は老朽化し、北は、この施設を破棄することを交渉のカードとして使おうとしてきた。

 また、弾道ミサイルについては、ICBMから中距離、短距離弾道ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイルの実験を成功させ、保有(実際には、潜水艦からは発射していない)している。

 短距離ミサイルは、GPS版誘導で、飛翔途中で軌道を変更でき、また命中精度も飛躍的に向上している。

(2)今後も戦略を継続するか、改めて揺さぶりを仕掛けるか

 朝鮮中央通信は2019年11月、党内候補を争っていたバイデン候補を罵倒する記事を配信したことがあった。

 だが、トランプ氏とバイデン氏の選挙戦になってからは、どちらかを非難したり、自国の核ミサイルの開発に関することを発信したりすることはなく、静かに見守っていた。 

 選挙後、バイデン氏が勝利宣言をしても、北は長く沈黙を保っている。

 北の朝鮮中央通信、労働新聞およびその他の報道を見ても、自国の核ミサイルについての戦略、米国への批判など一切ない。北は完全に沈黙を続けている。 

 トランプ氏が2期目にも登場することを予想して、基本的にその戦略を十分練っていたのであろう。トランプ氏の方が、北にとっては、好都合であったからだ。

 バイデン氏の当確が決まったので、北は休戦協定を平和協定締結に発展させ、在韓米軍を撤退させるという総力を挙げた努力が水泡に帰してしまった。

 おそらく戦略を練り直ししなければならない。北が達成したい目標は変わらないが、交渉のやり方を変えなければならないからからだ。

 バイデン氏が北の核ミサイルを完全に放棄させることを望むのか、将来の開発は認めないが、現状を認め妥協する可能性があるのかを判断してからということになるであろう。