11月25日、米連邦最高裁判所は、ニューヨーク州がコロナ禍を理由に教会など宗教的に集まる場所への入場を制限したことに対して、憲法違反との判決を下した。具体的には、ニューヨーク市において、シナゴーグに集まってお祈りをしようとしたユダヤ教徒を、コロナ禍対策として制限したことへの判断だった。
これはまた、トランプ大統領の指名の後、10月に議会承認を経て就任したバレット判事が参加した最初の判決でもある。今回の最高裁判決は、仮に大統領選挙が最高裁まで上がるとした場合の前哨戦と考えることも可能だ。
保守派のロバーツ判事は合憲と判断した
バレット判事の議会公聴会は、これまでにない紛糾を見せた。20年強、この手の公聴会を見てきた経験からすれば、紛糾というよりは、バレット判事に対する一方的な攻撃と言うべきものだった。
民主党の上院議員は米国で弱者といわれる人々の大きなパネル写真を提示し、バレット判事の信仰心が判決にどういう影響を与えるか、執拗に問いただした。ある種の宗教裁判的な色彩を帯びていたと言っても過言ではない、というのはあるカトリック信者の声である。
その理由を、ある民主党上院議員は「バレット判事が就任すると保守が6人、リベラルが3人となってバランスを失するから」と述べた。また、トランプ大統領が彼女を指名した際、大統領選が混乱した場合の最高裁判決を意識した選択というメディアの評価もあった。
今回の判決を見ると、バレット判事が違憲だとした一方、これまでの傾向からリベラル的な判断を下すとされていたロバート判事は合憲との判断を下した。結果は、5対4の一票差での違憲判決である。
つまり、仮にトランプ陣営が指摘するような不正投票や不正集計の事実が明確になって、大統領選が最高裁判決に持ち込まれる場合にも、ロバート判事がどちらの判断を下すかは不透明で、バレット判事の就任が保守に一票差の有利をもたらすと考えるべきだろう。
今回の判決は、「信教の自由は、感染症によって妨げられるものではない」というものだった。これは同時に、日本政府が唱え続ける「自粛」をニューヨーク州民が遂行することを妨げるものではないので、誰の目から見ても妥当な判決だったと言えるのではないだろうか。