エンワールド・ジャパン株式会社は2020年9月30日、「ジョブ型雇用」に関する意識調査の結果を発表した。調査期間は2020年8月31日~同年9月2日で、外資系企業(57%)と日系企業(43%)合わせて274社から回答を得た。これにより、外資系企業と日系企業それぞれが感じる、ジョブ型雇用に対する意識と今後の課題が明らかになった。

9割が「ジョブ型雇用」を認知。よりメリットを実感しているのは?

 職務内容にあてはまる専門性の高い人材を雇用する「ジョブ型雇用」が注目を集める中、企業はどのような意識を持っているのだろうか。はじめに、「ジョブ型雇用の認知度」を尋ねると、「知っている」と「聞いたことがある」の合計が全体で91%にのぼる結果に。企業別では、外資系企業が89%、日系企業では94%が認知していると判明した。

 続いて、「ジョブ型雇用にメリットを感じるか」を尋ねた。その結果、全体では69%が「メリットがある」(とてもそう思う:24%/ややそう思う:45%)と回答。特に外資系は76%が「メリットがある」と考えており、日系の61%を15%上回る結果に。海外ではジョブ型雇用が主流となっている場合も多く、メリットを感じる確率が高いようだ。

ジョブ型雇用のメリット/デメリットは?

 次に、「ジョブ型雇用のメリット/デメリット」を聞いた。まず、メリットは第1位が「専門スキルや知識を持つ即戦力人材を採用できる」で、外資系77%、日系72%となった。続いて「成果にコミットしてもらいやすい」が外資系65%、日系49%で2位となり、外資系が日系を16%上回る結果に。成果主義が主流の外資系と、多面的な視点で評価を行う日系の文化の違いを反映する結果と言えそうだ。

 また、デメリットで最も多かったのは「適性がないときに異動できない」で、外資系50%、日系56%という結果に。また、第2位は「事前に業務範囲を定義するのが難しい」だったが、外資系が44%に対し日系は55%と、日系が外資系を11%上回る結果となった。メリットと同様、ジョブ型雇用がすでに主流となっている外資系と、メンバーシップ型雇用を主流としてきた日系の考え方の違いが見て取れる。

ジョブ型での「採用のしやすさ」は五分五分

 さらに、「ジョブ型雇用で採用はしやすくなるか」と尋ねると、全体で「とてもそう思う」(14%)と「ややそう思う」(32%)を合わせて46%が「採用しやすくなると思う」(外資系:48%/日系:42%)と回答した。

「採用しやすくなる」とした回答者からは、「採用ターゲットがより明確になる」(外資系、旅行・レジャー)や、「候補者の強み、キャリア志向と会社のニーズ、育成の擦り合わせが行いやすい」(外資系企業、IT・通信)などの声があがった。

 一方、「採用しやすいと思わない」とした回答者からは、「条件を満たす候補者が少ない場合は採用に時間がかかる」(外資系企業、IT・通信)、「母集団が少ないため」(外資系企業、製造業・工業)という意見が寄せられた。

4割が「採用コストが上昇」と回答。その理由とは

 最後に、「ジョブ型雇用での全体的採用コスト」を尋ねた。すると、合わせて41%が「とても高くなる」(3%)、「やや高くなる」(38%)と回答。日系では「高くなる」が合計45%と、外資系の36%よりも9%高い結果だった。

「コストが高くなる」とした回答者からは、「ポテンシャルよりも具体的に専門性の高い人材を求めることとなるため」(日系企業、金融)、「人材の取り合いになり、より条件のよい企業へ人材が流れていく」(日系企業、旅行・レジャー)などの声があがった。

 また、「コストが低くなる」とした回答者からは、「ジョブ型雇用が浸透すれば、マッチングが容易になるため」(外資系企業、製造業・工業)、「人事担当者の採用工数が減少する」(日系企業、不動産)などの声が寄せられた。

 社会のデジタル化が進むにつれ、専門人材の需要はますます増していくだろう。ジョブ型雇用のメリットとデメリットを踏まえた上で、どのように日本企業に浸透させていくかは、社会全体が直面する課題とも言えそうだ。

 

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HRプロ編集部

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