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写真:西村尚己/アフロ

(文:磯山友幸)

 漫画『鬼滅の刃(きめつのやいば)』人気が、ひとり気を吐いている。

 単行本の発行部数は累計で1億部を突破。10月16日に公開されたアニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は公開3日間(10月16~18日)の観客動員数が342万人、興行収入46億円と、史上最高を記録した。

 10月25日には興行収入が107億5423万円を記録、公開から10日間での興行収入100億円突破は、『千と千尋の神隠し』が2001年に記録した25日間を大幅に短縮して、日本で上映された映画の中で最も速い日数での達成となった。

映画会社も出版社も潤った

 わずか10日で798万人を動員した「鬼滅の刃」は、新型コロナウイルスの蔓延で営業自粛を迫られてきた映画館業界にとっては、まさに天佑。配給元の東宝は2020年8月中間決算で、売上高が49%減の739億円に激減。純利益も37億9500万円と83%減少していたが、通期では当初見込んでいた50億円の純利益を90億円に上方修正。さらに「鬼滅効果」で強含みに推移すると見られている。株価は年初来高値を更新、新型コロナ前の水準に戻した。

『鬼滅の刃』は集英社の『週刊少年ジャンプ』に、2016年2月から2020年5月まで連載された吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)氏の漫画。大正時代を舞台に、主人公の竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が鬼に襲われて鬼になってしまった妹・禰豆子(ねずこ)を人間に戻す方法を探るために、剣術の技を磨き、鬼と戦っていく。

「出版不況」と言われて久しい中で、出版元の集英社は2020年5月期の売上高が、1529億円と前期比14.7%も増加。純利益は209億4000万円と、前期(98億7700万円)の2倍以上の利益を稼いだ。

様々な商品とのコラボが相乗効果

 テレビアニメとしても放映され、剣士や鬼など様々なキャラクターが登場することから、子どもたちの間でも爆発的な人気になった。

 そんな中で、人気をさらに燃え上がらせているのが、様々な商品とのコラボ。ロッテは「鬼滅の刃デザインボトル」入りのガムや、人気商品の「ビックリマンチョコ」のパッケージを変えた「鬼滅の刃マンチョコ」などを発売。ダイドードリンコは缶コーヒーのデザインに『鬼滅の刃』を使った「鬼滅缶」を売り出した。UHA味覚糖は「ぷっちょ」や「e-maのど飴」などでコラボ商品を発売した。

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