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(吉田 典史:ジャーナリスト)

 全社で在宅勤務を始める場合、特に問題となるのが社員間の意思疎通だ。これができていないから、各部署や個々の社員の仕事が滞る。このような状況は筆者が観察をしていると、ベンチャー企業や中小企業で目立つ。大企業に比べて、社員の定着率が総じて低く、育成が十分にはできていないためでもある。特に業績が急拡大する際に、特に問題が生じやすい。事業の成長に、社員の成長や社内の態勢整備が追い付いていかないためだ。

 今回は成長を続けながら、全社での在宅勤務をスムーズに進めるベンチャー企業を取材した。求人広告事業や人材紹介事業、採用ブランディング事業などを手掛けるプレシャスパートナーズ(東京都新宿区、104人)である。

新卒採用にオンラインを導入

 同社は今年(2020年)3月2日から、全社員を対象に在宅勤務にした(9月現在は、全社員の8割程が出社している)。新卒(大卒)の採用活動を始め、数週間が経った頃だった。すでに1月上旬から、海外での新型コロナウイルス感染拡大に社長、役員らは警戒し、対策を練っていたという。

 2008年の創業以来、順調に業績を拡大し、2012年4月入社の社員から大卒の新卒採用を毎年行ってきた。それ以前の採用は、20代半ばから後半にかけての「第2新卒」が中心だった。社長をはじめ、役員たちが「今後、中核を担うコア人材を育成していくうえで新卒社員は貴重」と判断した。「経営理念や社風をはじめ、会社の業務に第2新卒者よりも共感しやすい傾向がある。人材としての伸びしろに大きな期待もできる」(管理本部人事部長、執行役員CHOの中川梓氏)。

 エントリー者数はここ数年、数千人に達する。同一業界のベンチャー企業と比べて多い。入社数は2016年が13人、2017年は14人、2018年が20人、2019年が18人、2020年が11人。

 採用の大きな流れは年次により多少の違いはあるが、通常は次のものが多い。

 1次:会社説明会と座談会→グループディスカッション
 2次:面接
 3次:面接→適性検査と面談→社内見学と仕事体験
 4次:最終面接

プレシャスパートナーズ管理本部人事部長、執行役員CHOの中川梓氏