(北村 淳:軍事社会学者)
マーク・エスパー米国防長官が9月16日に米ランド研究所(安全保障・軍事戦略を専門にするシンクタンク)で行った講演で、アメリカの同盟諸国・友好諸国に対して、それぞれの国防費を少なくともGDP比2%以上に引き上げ質・量ともに軍事力を強化してほしい旨を明言した。
このエスパー長官による要求表明は、今後アメリカ軍が、極めて強力な敵となってしまった中国軍に対抗していくにあたり、とりわけ重点的に強化すべき3要素(海軍力の強化、同盟友好諸国との関係強化、ロジスティックス分野の強化)について再強調する講演においてなされたものである。
トランプ大統領が固執する「2%」
これまでもトランプ大統領自身が、多くのNATO諸国(とりわけドイツ)の国防支出GDP比率はアメリカに比べて低すぎると苦情を繰り返してきた。その結果、NATOは、「国防支出をGDP比2%以上に引き上げること」ならびに「国防費のうち兵器装備費の占める割合を20%以上に引き上げること」の2項目を、すべての加盟国が達成すべき努力目標、すなわち基本的ガイドラインに設定した(世界各国の国防費GDP比率の平均値は2%強の状態が続いているため、トランプ政権は2%という数字を持ち出しているものと思われる)。
トランプ大統領は「多くの同盟国がアメリカの国防支出に比べて“ただ乗り”状態にある」という不満を、しばしば口にしたりツイートしてきている。トランプ大統領の念頭にある不満の矛先の筆頭がGDP3位の日本と同4位のドイツにあることは明らかであり、それに引き続いて、NATOを構成する“裕福な”西ヨーロッパ諸国とカナダということになる。