(平井 宏治:日本戦略研究フォーラム政策提言委員、株式会社アシスト代表取締役)

中国特有の産業構造

 中国と一定の距離を置くことが必要な理由を理解するには、中国の産業政策や産業構造を知る事が必要だ。帝国データバンクによると、2020年1月時点で中国に進出する企業数は、1万3646社とされる。しかし、これら日本企業の内、中国独自の産業政策や産業構造を知るものはわずかだ。

 中国は、軍事拡大と経済成長が一体化した国だ。中国の産業構造の特徴とは、人民解放軍と政府、いくつかの軍事企業コンツェルンが、政治・経済・軍事の連合体を形成している点である。米国防総省が、今年(2020年)6月24日付の議員宛て書簡で、人民解放軍管理下にある企業にファーウェイなど20社を指定した。当該リストの中に、この軍事企業コンツェルンが含まれている(表参照)。

表:「米国で活動している中国の軍事企業」
出典:米国防総省が、今年6月24日付に議員宛て書簡で明示した「中国軍と関係の深い企業」各種資料を基に筆者作成
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 これら軍事企業コンツェルンは、人民解放軍の兵器や武器装備品の研究開発・製造で中心的な役割を果たしている。そして、各軍事企業コンツェルンの傘下には、開発された軍事技術を民生部門へ転換するための企業が存在する。また、2005年以降は、民生部門企業の軍事産業への参入が解禁された事から、民生技術を軍事技術に応用する企業もある。