知識の世界が急速に複雑化している中で、従来の詰め込み教育に頼っていると取り返しがつかないことになる(写真は英国のケンブリッジ大学)

知識ジャングル見通す「好きになる力」

 2020年、短かった夏休みが終わり、子供たちが学校に通い始めました。親御さんの中には「学習のリズムが狂って、学力が低下するのではないか?」と心配される声もあるようです。

 教育を専門とする仲間によれば、ドリルをやらせたり、いろいろ子供たちのお尻を叩くような施策が進められているようです。

 そういうとき、私は子供に好きなことをさせ、「あれこれコントロールしなさんな」という種類の話ばかりします。

 というのも、毎年入ってくる東京大学生たちに尋ねて「やりたいこと」が「ない」という学生の率が、年々高まっている背景があるからです。

 学生は、それなりの憧れは持っている場合もあります。

「弁護士になりたい」「公務員試験を受けるつもり」「AIのエンジニアになる」「環境問題に役立ちたい」・・・

 何か動機を持つような経験があるのでしょう。親に言われてというのも、あるいは親への反発とか、そういうケースもありますが、少しの意見は持っている。

 ところがそれが「具体性」を帯びないんですね。

「司法試験はクリアしなきゃならない」と思っている。でも民法の暗記なんか死ぬほど嫌い・・・というような学生がごく普通にいます。

 でもそれだと、伸びにくいんですね。「好きこそものの上手なれ」とも言います。辣腕の弁護士は、自分の得意分野を水を得た魚のように泳ぐわけで、「水魚の交わりはまず好きになることから」は鉄則です。

 親御さんには、どうか、子供が何かを「好きになる力」を伸ばすのが大事だということを、忘れないでいただきたいのです。