凸版印刷株式会社は2020年7月31日、完全オンライン形式で実施した新入社員研修の成果を発表した。同研修は新型コロナウイルス感染拡大を受けて、2020年4月1日~5月15日に実施したもので、凸版印刷およびグループ企業の新入社員420名が受講。これにより、オンライン形式による研修の可能性や、その効果が明らかになった。

動画配信セミナーの他「ライブコミュニケーション」や「コンディション管理」なども

 新型コロナウイルス感染症拡大を受け、凸版印刷では2020年度の新人研修を完全オンラインにより実施。研修の内容は、「動画による研修(講義)」や「ライブ配信セミナー」のほか、先輩社員と交流を深めるための「ライブコミュニケーション」、「社会的課題解決に向き合うグループワーク」など多岐に渡ったという。

 研修の実施に当たっては、教育ラーニングプラットフォームの活用により、従来の集合研修で蓄積したテキストを、動画やライブ配信などを用いてオンライン上で学習できるように整備。それとともに、420人の新入社員をネットワークで繋ぎ、約20人に対し1人のトレーナー(先輩社員)を配置するサポート体制を構築した。これにより、出社を一度もしない状況下での新入社員の不安を緩和し、安心して課題に取り組める環境提供が可能になったようだ。

 また、コンディション(体調管理)に関するセミナーに加え、アプリを利用した毎日のウォーキングを研修プログラムとして組み込み、自宅で終日座学が続くことによる、生産性や集中力低下への対策も実施したという。

9割以上の新入社員が毎年実施のアセスメントで90点以上。平均スコアは過去最高を更新

 研修最終日には、凸版印刷に関する基盤知識や制度を問う「総括アセスメント(講義全体を包括する総合テスト)」を実施。オンライン研修を実施した2020年の点数を見ると、平均95.9点(昨年比約7%増)となり、過去8年間の中で最も高い結果となった。また、約92%の社員が90点以上をつけたことからも、オンライン研修によって、多くの新入社員が凸版印刷で働く上での基盤知識を身につけていることが明らかと言える。

 また、オンライン研修によりスコアが高くなった要因として、受講者の約76%が復習のために動画コンテンツを見返していることがあがった。従来の集合研修では、研修内容を繰り返し見ることは難しく、オンライン化のメリットといえそうだ。

8割以上の受講者がコンディション管理を通じ「生産性向上」を実感

 さらに、「心身のコンディション管理を目的としたセミナーを実施したことで、コンディションについて意識するようになったか」を尋ねた結果、「とても意識するようになった」が71%、「どちらかというと意識するようになった」が27%となった。合計で98%の社員が、セミナー受講により体調管理を意識するようになったことが判明した。

 また、運動量が減りがちな在宅下で取り入れた「ウォーキングワーク」について、「パフォーマンスアップや集中度アップに有効だったか」と聞くと、「十分に有効」が43%、「有効」が39%という結果に。合計82%にのぼる新入社員がウォーキングワークの有効性を実感したようだ。

ほぼ全員の新入社員が「オンライン研修により意識変化があった」と回答

 最後に、「研修全体を通じて同社で働くことに対する意識変化」について質問すると「十分な変化があった」との回答が65%、「変化があった」が34%となり、99%の新入社員は何らかの意識変化を感じていることがわかった。

 具体的な変化の内容としては、「社会人としての基礎の形成につながった」、「革新的なことに取り組んでいることが分かり、企業イメージが変わった」、「企業の歴史を通じ、企業理念を知るとともに、これからやるべきことが具体的になった」といった声があがったという。

 同社では、来年度に向けてオンラインのメリットを最大限活かすべく、さまざまなテクノロジーを活用し、工場見学やスキル訓練、フィールドワークといった研修でもオンライン化の可能性を追求。ニューノーマル時代の教育革新に取り組むとともに、働き方改革にも繋げていく考えだ。

 コロナ禍により新人研修のオンライン化を模索・実施する企業は多い。ニューノーマル時代における新人研修では、これまでの研修内容にとらわれず、オンラインならではのメリットとデメリットに配慮した、さまざまなプログラムを導入することも必要になりそうだ。

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HRプロ編集部

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