乾貴士のスペイン5シーズン目が終わった。所属するエイバルは今年も1部残留を決めた。乾にとって、来季はスペイン6年目になる。
5年前の夏、バスクの山あいの小さな町にやってきた27歳の青年にであったとき、彼がこれほど長くスペインでプレーすることになるとは想像していなかった。
選手としての能力が高いのは誰の目にもあきらかだったし、エイバルの敏腕スポーツディレクターもそこに目をつけて獲得をきめたわけだから、この国で活躍し、生きのびることのできるポテンシャルは秘めてはいた。
それでも2015年当時、日本人選手が長期的にスペインでプレーし、一定の活躍を続けるというのはあまり考えられないことで、「できるだけ長くスペインでやりたい」という新選手の言葉は、どちらかといえば夢物語のように聞こえた。
実際のところ、ドイツやイタリアとは違ってスペインには日本人が長くプレーした前例がなかった。エイバルのファンも、まさか自らのクラブがこれほど長い間トップリーグにいて、乾がそのチームの中心選手のひとりになるという未来は、どんな楽観的な人でも描けなかっただろう。
悔しさが残るシーズン
長くスペイン1部でやり続けてきたプライドは乾の胸にもある。しかし今季を振り返る時に浮かんでくるのは悔しさばかりだ。
「もっとチームに貢献したかった。そこは本当にふがいない。エイバルに買い戻してもらった身だったから」
そう乾は振り返る。
1年前の7月末、当時ベティスに所属していた乾をエイバルは完全移籍で買いもどした。異例の決断だった。エイバルには確固たる方針があったからだ。
移籍金ゼロで出ていった選手は買いもどさない――。
前年に乾は移籍金ゼロでベティスへ移籍していた。しかしそれから1年後、乾を評価するメンディリバル監督が中心となって各方面に働きかけ、クラブは掟を破って乾を再獲得する。
活躍することで恩返しする――。乾の胸にはそんな思いがあった。
「だからチームにもっと貢献したかった。守備はある程度できているけど、攻撃面で得点に絡むプレーをやらないといけない。序盤は同じポジションにオレジャーナがいて、完全に力負けした。自分のコンディションも、シーズンを通してあまり上手くいかなかった」
ライバルの存在と整わなかったコンディション。それだけでなく、いまひとつ波に乗れなかった理由がある。メンタルの問題だ。