多様な働き方を担保する労務管理は、まずは従業員の意識変革から
制度・ツールなどのハード面の見直しに加えて、新しい働き方に対する従業員の意識・知識というソフト面の更新も非常に重要です。繰り返しになりますが、働き方の柔軟性を担保した結果、過重労働を誘発し法令違反につながるのでは本末転倒です。過重労働は最たる例ではありますが、通常は従業員の意識調査などで労務管理上の問題を「意識・知識・行動」の観点で分類し、「意識の変革」、「知識の習得」、「行動の変革」を促す施策を検討していきます。下図のアプローチのように、問題点を把握後に実現したい状態目標(あるべき姿)を定め、必要な施策の検討と導入を進めます。
図2:知識・意識・行動の変革アプローチ例
上図の詳細アプローチについては次回以降に解説しますが、施策の実現にはデジタルの力が必要となります。例えば、「知識の習得」のために集合研修を増やした結果、総労働時間が増加するという事態を招かないよう、既存業務の効率化とあわせて考える必要があります。効率的かつ効果的な知識習得の機会を設けることが重要です。これには、集合型研修ではなくオンラインベースの学習と理解度チェックが有効な手段となります。また、「行動の変革」には労務管理と周辺領域を含めたデジタライゼーションが不可欠になるでしょう。
次回も引き続き、デジタルツールを活用した労務管理における意識・知識・行動の変革推進について解説していきます。
著者プロフィール EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社 外資系総合コンサルティングファーム、事業会社を経て、2017年9月より現職。コンサルティングファームでは主にHR領域のマネジメントプロセス設計・改善に関するサービスに従事。事業会社では人事企画担当として人材マネジメントに関する制度設計、事業統合やカーブアウト時の制度統合・新設を担当。近年はコンプライアンスと生産性をキーワードとした多様な働き方の実現に関するコンサルティングサービスを専門としている。 |