500種類以上のレトルト食品、その4割以上がカレー

 日本で最初に発売されたレトルト食品は、大塚食品のボンカレーです。1968年のことで、私が小学生のころでした。ボンカレーを初めて食べた日のことを今でも鮮明に思い出します。37歳だった新しもの好きの父が鍋でボンカレーを温めて、レトルトパウチの封をはさみで切って、ルウをご飯にかけて家族そろって食べました。袋の中からカレーのルウが出てくるのが不思議でなりませんでした。

 いまや日本では500種類以上のレトルト食品が出回っています。中でもカレーが圧倒的に人気で、レトルト食品の4割以上がカレーで占められます。

 その次に人気があるのが「つゆ・たれ」です。2010年ごろから鍋もののスープのパックがヒットし、いまも年々消費量が拡大しています。秋冬の鍋シーズンになると、ちゃんこ鍋、キムチ鍋、寄せ鍋、トマト鍋など実にバリエーション豊富にスーパーの店先に並びます。

 このほかにも味の素の「クックドゥ」シリーズのような「料理用調味ソース」や、カレーに次ぐ「シチュー」も人気です。一人暮らし世帯が増えていることもあって「食肉野菜混合煮」のレトルトパックも増えています。逆に「かまめしの素」や「ミートソース」などのパスタ用ソース類はここ数年で人気が足踏みしています。

レトルト食品生産数量の推移
レトルト食品生産数量の推移

短時間で調理できる手軽さが国民的人気の理由

 レトルト食品がこれほどの国民的な人気を博し、日常生活に溶け込んでいった理由は、レトルトならではの特徴がいくつか備わっているためです。

  1. 安全で簡便な食品であること。レトルトパウチ(食材が入っている袋)は化粧箱に入っていることが多く、そのまま店頭に飾ることができ、保存料を使用せずとも日もちがして衛生的であること。
  2. 食材は真空下で調理されているため、ビタミンなどの栄養成分の消失が少なくて済むこと。
  3. 長期間の保存(1年から2年)が可能。常温で流通させることができ、運搬のコストを抑えられる。
  4. 短時間で調理して食卓に並べることができる。(電子レンジまたは湯加熱で3~5分くらい)。軽量なので携帯用として持ち運びができ、開封も容易であるため、非常用の保存食にも適している。

 消費者アンケートを採ると、レトルト食品を食べるシーンとしては、「料理をするのがめんどうな時」が最も多く、次いで「ひとりで食事をする時」、「すぐに食べたいとき」、「調理する時間がないとき」などがそのあとに続きます。レトルト食品はその手軽さが消費者に受けていることになるようです。

 購入場所も、以前のようにスーパーの売り場だけでなく、コンビニエンスストア、ドラッグストア、ホームセンターなどにどんどん広がっています。種類も年々増えて、専門店のシェフが作ったようなホットな食事を、自宅で手軽に食べることができます。それがここまでレトルト食品が広がった理由とも考えられます。