事業主としてパワハラを防ぐための措置とは

 では、どのようにパワハラを防ぐ措置をすればいいのか、についてお話ししていきましょう。企業が事業主としておこなわなければならない措置は、次の3つになります。

(1)企業の「パワハラに対する方針」を明確にして、その社内周知や啓発をする
(2)従業員からの相談に応じて適切に対応するために必要な体制をつくる
(3)パワハラが起きた時、迅速で適切な対応をする

 まずは(1)ですが、たとえば「就業規則」によってパワハラを防止するための服務規律を規定します。そのうえで、従業員に対して社内報やメールなどできちんと知らせることがあげられます。

(2)は、従業員が会社に相談できるように、相談窓口をつくることです。これは必ずしも自社内に作る必要はなく、たとえば社労士事務所と提携して窓口になってもらうことも考えられます。その方が、従業員の負担が少なくなるうえに、労務の専門家が窓口になってくれるので経営陣も安心でしょう。

 最後の(3)は、もしパワハラが起きたときに、速やかに事実関係を調査して就業規則に規定されている処置を行なったり、再発防止策を実施したりする、といったことになります。ただしこれは、「法律で決められているから」おこなうのではなく、「職場環境を良くすることによって企業が成長するため」という視点に立っておこなうべきことです。

 先述した厚生労働省の調査結果(※2)の中では、「パワハラの予防や解決に向けて取り組んでいると、『休職者・離職者の減少』や『メンタル不調者の減少』などの効果が見られる」とされています。その反対に、取り組みを考えていない企業は「職場の生産性が低下する」、「企業イメージが悪化する」などの認識が低い、とまでいわれているのです。つまり、パワハラに対して真摯に取り組むことは、職場の環境を良くし、企業の業績向上に貢献することにもつながるのです。

 しかし、パワハラ撲滅はすぐに実現できるものではなく、手間と時間がかかります。また、専門の知識が必要にもなりますので、パワハラ防止に取り組む場合は、近くの社会保険労務士に相談することをおすすめします。


※2:厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の報告書
別添1「 平成28年度 職場のパワーハラスメントに関する実態調査 主要点」(PDF)


山口善広
ひろたの杜 労務オフィス
社会保険労務士
https://yoshismile.com
 

著者プロフィール

HRプロ編集部

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