個人年金保険の利点と課題

 個人年金保険の毎月の積立額に相当する保険料は、生年月日と性別、払込期間、受取開始の年齢、(個人年金保険の)将来の受給額で決まります。つまり、契約の段階、いえ、契約する前のお見積りや設計(プランニング)の段階で将来のことが分かってしまう、もとい決まってしまいます。
 この「将来が決まっている」というのは、契約する方にとっては大きな安心といえるでしょう。

 特に、「公的年金」といわれる老齢基礎年金や老齢厚生年金は、「将来、どのように改正されるか分からない=何歳から、毎年いくらもらえるのかが分からない」という不安が付きまといますから、いかに保険会社の商品に過ぎないとはいえ、「将来が決まっている」という安心感は何ものにも代え難いでしょう。
 「将来が決まっている」、つまりマラソンと同じですね。マラソンはゴールがあり、ゴールが見えるから走ることができるんですよね。

 とはいえ、現在の金利情勢では、個人年金保険を契約できるのは30代までの若い方に限られていたり、無理のない積立額(=保険料)で契約することができるのも、やはりお若い方だったりします。

 ところで、個人年金保険の特徴は「将来の受給額が決まっている安心感」ばかりではありません。個人年金保険には、お若い方ならではの2つの課題があります。

 一つ目は、本稿の連載当初から筆者が繰り返し述べているインフレという課題。
 保険会社の経営破たんのようなよほどのアクシデントがない限り、将来の受給額は、契約時のお約束通りの「決まった金額」を受け取ることができるでしょう。しかし、その受給額の「価値」は、現在と同じ「価値」なのか?という課題。

 そして二つ目。
 個人年金保険の保険料を払い込む期間が決まっている、つまりゴールが定められているとはいっても、その払い込む期間が「長~い」という課題です。
 その払い込み期間の長さゆえ、「自身の将来について、何がどうなるのか分からない」と、個人年金保険の必要性を感じながらも、契約をためらっていらっしゃるお若い方が多いのではないでしょうか?
 分かりますよ。そのお気持ち。

個人年金保険よりも積立投資?

 先述の通り、個人年金保険は「受給額が決まっている」という大きな安心感を得ることができるものの、インフレに弱いどころか、一般的な傾向として「パフォーマンスが弱く、(払い込んだ保険料に比べ)ほとんど増えない」というネックも存在します。

 「だったら、個人年金保険よりも積立投資の方がまだマシ」という方もいらっしゃることでしょう。

 確かに、個人年金保険に比べれば、積立投資の方が「大きく増える」という期待を持てるので、それゆえに「インフレにも対応しやすい」ともいえます。が、そもそも積み立て投資には「払い込み期間」というものがありません。つまりゴールのない、果てしのないマラソンを走っているのと同じなのです。
 (投資信託の中には「信託期間」を設けているものもありますが、延長されることも多く、事実上、「期間がない」と見ることができます)

マラソンゴールのないマラソンを走り続けるのはつらいもの。積立投資は自身でゴールを設定する必要がある

 なので、積立投資では逆に自身でゴールを設けることもできますし、そうする必要もあるでしょう。例えば、「私の60歳の誕生日をゴールとしよう」という具合に。
 しかし、その60歳のお誕生日に、今回起きた新型コロナウイルス感染症の流行のような世界的なアクシデントがあり、「自身で設けたゴールがゴールにならなくなってしまった」ということになったらどうすればいいか、という不安が付きまといます。

 なにより「将来の老後資金としてあてにしている」お金を、投資信託という「不確実な=決まっていない」商品で準備して良いものか、特に、今のような時期では思いますよね。