損益分岐点を下げるためには?
「積立投資で損益分岐点を引き下げるためには?」という問いに対して、答えは2つあります。
まず1点目は「積み立ての期間が長期である」こと。
本稿の例では12年9カ月でした。
では、この「長期」とはどのくらいの期間なのか、具体的に示すことができるのでしょうか?
明確なことは申し上げられませんが、やはり10年以上を目安に考えておきたいところです。
そして2つ目は「基準価額の変動(=基準価額の上下)の幅が大きい」こと。専門的な言葉を用いて表現すれば「ボラティリティ(=ボラ)が激しい」ことです。
前稿の「金(=ゴールド)の積立投資」のお話を思い出してみてください。「金は価格変動と為替変動の2つの変動リスクがある」ことを訴求していました。同じく前稿の最後の方では、「積立投資は安く買う、安く買う、安く買うのがあるべき姿」と、さらっと言っています。
安く買う、すなわち基準価額が低い時に買うことができれば、投資信託の取得口数を増やすことができ、損益分岐点を引き下げる効果を得られるのです。
なぜ、日本株ファンドの方が公社債ファンドに比べて損益分岐点が低くなったのか、もうお分かりでしょう。株式は公社債より価格変動が断然大きいからです。
先述の表では、日本株ファンドの取得口数の合計は、公社債ファンドのそれに比べると多く、その差は376,405口となりました。
積立投資の別名はドルコスト平均法、日本語では定時定額投資
投資日 (買った日) |
投資額 (円) |
基準価額 (円) |
取得口数 (口) |
---|---|---|---|
2月27日 | 10,000 | 4,789 | 20,881 |
4月30日 | 10,000 | 14,339 | 6,974 |
本稿で取り上げた日本株ファンドですが、2009年2月27日には1万円で購入したときの取得口数が20,881口なのに比べ、2020年4月30日では同じ1万円で6,974口に減ってしまいました。
積立投資は定時定額投資とも言います。本稿で挙げた表は、「毎月の最終営業日(=つまり定時)」に、「毎月1万円ずつ投資(定額投資)」しています。
その結果、基準価額が低い時(上の例では2009年2月27日)には多くの口数を得ていますが、逆に基準価額が高い時(2020年4月30日)は得ている口数は少ないです。
もし、今まさに積立投資を行っていらっしゃる読者の方。投資信託の基準価額が大きく下がって一抹の不安を抱き、「積立投資の毎月の額を減らそうか? あるいは積立投資そのものを止めてしまおうか?」とお迷いの方、いかがでしょうか?
基準価額の大幅下落の時期は、いわゆるバーゲンセール期間ともいうことができそうです。
もちろん、基準価額が大幅に下落していたとしても、収入やお仕事などの事情もあろうかと思いますし、ライフイベントの都合などもあると思いますので、ここで皆さまに一律の結論をお出しすることは避けなくてはなりません。
積立投資の最大のメリットはタイミングからの解放
投資を行ううえで、迷うのが「いつ買うの?」という投資を始めるタイミング。
そして始める時以上に大切で、もっと迷うのが「いつ売るの?」という、投資を止めるタイミングです。
筆者は積立投資の最大のメリットは「タイミングからの解放」だと思っています。
「積立投資って、いつから始めたら良いの?」という問いに対しては、先ほども申し上げましたが「いつでも、どうぞ」「今でしょ」が答えになると思います。
また、「いつ売るの?」という問いに対しては、さすがに「いつでも、どうぞ」とは言えませんが、先述の通り積立投資は「損益分岐点を引き下げる」ことが目的であり、得ることができる効果です。そして、損益分岐点の引き下げは「売却のチャンス(=売却のタイミング)」を増やすことにつながります。
認めたくないものだな、若さゆえの特権というものを
さて、次回は20歳代~30歳代半ばまでの、お若い方だけにお伝えします。
かつて筆者も実践した「積立投資+個人年金保険」の組み合わせによる、名付けて「オールレンジ投資」です。このオールレンジ投資は、30歳代半ばまでのお若い方だけが実践できる、まさに「若さゆえの特権」だと思います。もちろん、年を取ったと認めたくない「自称お若い方」でも良いかもしれませんが……。
次回は『見せてもらおうか!積立投資の実力とやらを~その3 オールレンジ投資』です。