新型コロナウイルスの感染が拡大する以前、研修や講演など企業のセミナーはリアルの場で盛んに行われていた。しかし、感染が拡大し、多くの企業がリアル開催のセミナーを休止や延期せざるを得なくなった。ここで、一気に採用が増えたのが「ウェビナー」や「Webセミナー」、「オンラインセミナー」などと呼ばれるWeb上のセミナーだ。新たな社内研修や講演、セミナーの手法として、注目を集めるウェビナーについて紹介する。
「ウェビナー」ってどういうもの? メリットデメリットは?
ウェビナーとは、Webとセミナーを組み合わせた造語であり、「Web上でセミナーを視聴者に配信する」ということを意味する。「Webセミナー」や「オンラインセミナー」とも呼ばれ、自宅やオフィスから参加できるため、3密を防ぐセミナー手法として、導入する企業が増えている。
ウェビナーの配信方式は、大きく「リアルタイム配信型(生放送配信)」と「録画配信型」の2つ。リアルタイムの場合は、視聴者のレスポンスを確認しながら進められ、録画の場合は、自分の好きなタイミングでセミナーを視聴することができる。このようにウェビナーには、リアルの場で開催されているセミナーにはない特徴があり、主催者側、参加者側でそれぞれいくつかメリットがある。
●主催者側のメリット
・オンラインのため集客しやすい
・オフラインでのセミナー開催よりコストを削減できる
・双方向に情報をやりとりできて信頼関係を築ける
主催者側は、場所や交通費の制約がなくなる分、幅広いターゲットに対してアプローチすることができる。オンラインのため、会場費、準備などのコストがかからず、費用も抑えられる。また、投票やチャット機能を活用することで、参加者とコミュニケーションを取る機会が増え、信頼関係も築きやすい。
●参加者側のメリット
・参加する時間と場所にとらわれない(録画配信型の場合)
・気軽に参加でき、移動の制約を受けない(リアルタイム配信型の場合)
・双方向性が高く、講師に直接質問できる
参加者側は、会議室やイベント会場に足を運ぶ必要がないため、インターネット環境さえ整っていれば、場所や時間に関係なくセミナーを視聴することができる。交通費や移動時間の負担もなく、忙しいビジネスパーソンでも利用しやすい。また、リアルの場にありがちな質問しづらい雰囲気はなく、チャット機能を使うことで気軽に質問でき、内容の理解が深まるメリットもある。
ただ、デメリットもいくつか存在する。参加者と主催者の双方に言えることだが、利用するうえで、「配信環境や設備による不具合」、「リアクション機会の減少」には気をつけないといけない。配信環境や設備に不具合が生じることで、参加者に不信感を与える恐れがある。また、ウェビナーの形式によっては、リアルタイムでのリアクションが取れないこともあり、参加者の満足度を下げることがある。
ウェビナーは正しく運用することで、リアルの場にはないメリットを生み出すことができる。しかし、ウェビナーの仕組みを理解していなかったり、運営の準備が不十分だったりした場合、期待している効果を得ることはできない。そうならないためにも、ウェビナーを開催するうえでのポイントを押さえておく必要があるだろう。
「ウェビナー」を始めるのにどういうツールが必要? コストは?
ウェビナーを開催するうえで重要なのが、目的やターゲット、配信方式の設定である。設定した条件に沿ったツールを選ぶことで、参加者の満足度をぐっと上げることができる。ただ、ウェビナーで使用するツールは、数多く展開されており、価格や機能もそれぞれ違う。そこで、どのようなツールがあるのか、特徴やコストはどのようなものか、ここでいくつか紹介したい。
【1】Zoomビデオウェビナー
Web会議サービス「Zoom」を提供している、米Zoomビデオコミュニケーションズのウェビナーツール。録画したセミナーをオンデマンド配信のコンテンツとして二次利用できたり、Marketing AutomationやYouTubeと連携したりできる。セミナー中にリアルタイムで、アンケートを実施する機能も付いている。月額利用料は5,400円(100名まで参加可能)から。
【2】V-CUBEセミナー
クラウド型映像配信サービスとして、Webセミナーのライブ配信やオンデマンドコンテンツ配信が可能。最大10,000拠点のPCに対してセミナーを行えるシステムを備えている。高画質で配信できる強みもある。料金は要問い合わせとなっている。なお、提供は株式会社ブイキューブ。
【3】Cisco Webex Events
高品質テレビ会議システム「Cisco Webex」を提供している米Cisco社(日本法人はシスコシステムズ合同会社)のウェビナーツール。リードの追跡を行うことができ、ウェビナーの参加者情報をマーケティングやセールスのデータベースへ統合もできる。無料プランがあるほか、有料プランは月額1,490円(1会議につき100名まで参加可能)から。同時に参加出来る人数や機能に応じて3つのプランが用意されている。
【4】コクリポ
株式会社コクリポが提供する時間課金制のウェビナー配信ツール。安価なビジネスプランは月額30,000円で100名までのセミナーを10時間まで実施可能。追加料金を払えば、利用時間を増やせる。配信に加え、参加者のアドレスや発言、アンケート結果などを記録して管理する機能を備える。参加人数は3名と少ないが無料プランがあり、気軽に試せる。
【5】ネクプロウェビナー
ウェビナーマーケティング事業を展開する、株式会社ネクプロのウェビナーツール。初心者でも使いやすいシンプルな画面と簡単な操作が特徴。インストールをする必要はなく、Webブラウザのみで使用でき便利。また、参加者のチャット内容やアンケート回答結果の集計ができ、受講状況を分析する機能もある。月額利用料は5,000円(50名まで参加可能)から。
※ツールの価格に関する情報は2020年5月のもの
この先も新型コロナウイルスと共に生きていく「withコロナ」を前提とした社会に変わるとみられている。そうなると、企業もwithコロナを見据え、テレワークを前提とした働き方や事業活動へのシフトが加速するはずだ。そのような中で、対面による感染リスクがないばかりか、双方向性を活かしてそれ以上の効果を期待できるウェビナーは、ビジネスや人材育成などさまざまな場面で利用が進むはずだ。今回紹介した以外にも多くのツールが展開されているので、用途に合ったものを見つけてもらいたい。
著者プロフィール HRプロ編集部 採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。 |