「AIの進化が及ぼす未来への影響」を背景に、どのような教育投資が最も効果的かを考えてきた本連載も、ついに最終回となりました。子どもに親がしてあげられる最大の投資について、お伝えしたいと思います。

愛されているという環境が子どもの「自己肯定感」を生む

 前回の記事では、子どもたちを待ち受けている不確実な世界に対して教育投資を選択する際には、教育資金という性格を強く意識した選択が重要であることをお伝えしました。

 この最終回では、読者のみなさま全てが生まれ持った、価値ある資産「時間」をどのようにお子さまの教育投資に活かすのかという点に触れます。

 最近の経済学の研究において、幼少期における教育が、投資効果として非常に効果が高く、将来の収入の高さにも影響を及ぼすことが研究結果で証明されています。

 乳幼児の健全な成長に必要なことは、親の愛情と安心感です。生まれたばかりの新生児は、理由なく微笑みます。それは、少し笑うだけで親の愛情を得ることができることを本能的に知っているから、と言われています。愛されていると実感し、安心感で満たされている環境が子どもの「自己肯定感」を育みます。

答えを急がないことが子どもの「発想力」を育む

 また、つかまり立ちができる頃になると、行動範囲が広がることで、見えるもの、触れられるものが増えて、芽生え始めた好奇心がよりふくらみ、興味を持ったもの、関心があることを我々親に一生懸命伝えるために言葉を発しようとします。
 その時に、親はどのような対応をすればいいか。それは、親が先回りをせず、「何に興味あるのかな。何がしたいのかな」という姿勢で、待つことです。そうすればもともと生まれ持っている力「関心力」を引き出し、「発想力」を培うことができます。

 第3回目の記事で、正解がわからない世界でより良く生きていくために、「思考力」「判断力」「表現力」を身につける必要がある、とお伝えしました。最近、保護者の皆さまから、「家庭で、これらの力を身につけるようには、どうしたらいいのですか」というご質問をいただきます。

 例えば、思考力。お子さまにできる限り、自分で考える場面を作ることです。大切にしていたオモチャを壊してしまったお子さまに対して叱るのではなく、「どうしたらこうなったの」「これからはどうすればいいと思う」と親が問いかける。思考をめぐらせたり、考えたりする機会をつくり、日々の生活の中で養っていきます。
 親の愛情に育まれて養われた「自己肯定感」や「発想力」、日々の生活の中で培われた「思考力」「判断力」「表現力」。「AIの時代を生き抜くための力」である「身の周りや世の中の問題・課題を見つけて、「自分だったらこうしていこう」と自分なりに考えや意見を出す。その姿勢がクリエイティブなアイデアを生む。自らの知識や経験をわかりやすく伝え、そして、周りの仲間と試行錯誤しながら、新しい考え、新しい価値を作り上げていく」。まさに、これから到来する不確実な世界を生き抜くための基礎となる力。