(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)
1月に受け入れ体制を準備していた山梨大学
山梨大学では島田眞路学長が中心になって「医療維新」という情報を配信している。私は医療にはまったくの素人だが、大いに勉強になるし、非常に貴重なものだと思う。
山梨大学の新型コロナウイルスに対する対応は、政府とは比べものにならないほど早かった。「医療維新」の3月12日版を見ると、次のような記述がある。
「1月25日、春節を迎えた中国の武漢の様子を伝えるニュースを見て、私は目を疑った。1000床の専門病院を2棟、10日余りで建設するというではないか。患者があふれる医療機関の様子も映し出され、医療者はフルPPE(個人防護具)で対応している――。WHOの判断とは異なる異様な光景に、直ちに準備を進めないと大変なことになると直観した私は、山梨大病院の感染制御、医療安全のメンバーに連絡を取り、山梨大病院として患者受け入れの体制整備を早急に進めるように指示をした」
この時期、北京の日本の中国大使館のホームページには、春節への安倍首相の祝辞が掲載され、「多くの中国の皆さまが訪日されることを楽しみにしています」と来日を呼び掛けていた。山梨大学との危機感の違いが初動対応を遅らせたのだ。
それだけではない。「山梨大病院の対応は早く、週明けの1月27日月曜日の朝には、武田正之病院長をはじめ感染制御、医療安全のメンバーが出席する会議を開き、感染症指定医療機関ではないものの、山梨県の医療における最後の砦である国立大学病院として、感染拡大に備えて院内の体制整備を進めていくことを申し合わせた。山梨大病院は、病院再整備事業の真っ最中であり、2015年に新病棟に移転した際の旧病棟(約300床で、1 病棟当たり約50床)が休止状態であったため、万が一の場合にはこの病棟も活用できるよう医療ガスやナースコールなどの休止設備の立ち上げ準備も同時に指示した」というのだ。