4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「緊急事態宣言」が発令された。これにより、全国の大学が4月からの開講を見直すことになった。
大学は、本来は「対面授業」で3密(密接、密集、密接)で教育している(【図1】)。しかし、3密を避けて開講できなければ「大学崩壊」に繋がってしまう。文部科学省は、「対面授業」に代えて「遠隔授業」の活用について、3月24日付け通知を出していた。「大学崩壊」を避けるため、多くの大学は、遠隔授業を計画し5月7日以降に本格的に開講していくことになる。
私は、立命館アジア太平洋大学(APU)で教授として13年間教壇に立ち、現在も名誉教授・客員教授として、年間数科目教えに行っている(【図2】)。そのAPUも5月7日以降、遠隔授業で開講することとなった。かつて私は、客員教授をしていたスタンフォード大学から、遠隔授業でAPUのゼミを行った経験があるのだが、残念ながら今回はAPUの遠隔授業を回避することにした。
遠隔授業の設備が整っていない大学も
カリフォルニアと大分を結んで遠隔授業をした経験を持つ私が、なぜ今回は止めたのか。遠隔授業が乗り越えなければならない課題に気づいたからだ。同時に私の中で、遠隔授業はコロナによる「大学崩壊」を食い止める切り札になるのだろうか、という問題意識が膨らんでいった。
私は、APUの遠隔授業の立ち上げに関わっていない、また情報系の教員でもない。しかし、遠隔授業を実施した経験を持ち、そしていかに実施しようかと現在も苦闘している。これらの情報を、これから遠隔授業を立ち上げようとする先生方と共有することにより、「大学崩壊」を防ぎたいとの思いから今回寄稿することにした。
文部科学省が4月13日に公表した通知では、8割以上の大学等で遠隔授業を実施又は検討する方針となっている(【図3】)。内訳は、「実施する」が47.4%、「検討中」が37.0%である。
しかし、ヒト、モノ、カネの準備が整っていない大学も多いようだ。そうした中、「緊急事態宣言」の発令により、多くの大学で開講が5月6日以降に延期になったことで、準備のための期間を取れることになった。まさに「地獄に仏」の状況だった。