新型コロナウイルス感染の影響は、世界中の各国で驚異的な速度で拡大し続けており、ついに東京オリンピック・パラリンピックの1年延期が決定してしまうほど、人類は新型コロナウイルスとの長期戦を覚悟せざるを得ない状態となっている。しかし、そのような状況の中でも、企業は事業継続を前提とした企業活動を行っていく必要があり、4月で新年度を迎えるこの時期は、新卒採用や新入社員受入れを行う大事な時期となっている。
 HR総研では、2月中旬から新型コロナウイルス感染拡大による企業活動等に関する緊急調査を実施しており、今回は、新型コロナウイルス関連調査の第3弾として、「新型コロナウイルス感染拡大による新卒採用や新入社員受入れへの影響」に関する企業の最新動向を調査した。その結果をフリーコメントも含めて以下に報告する。

<概要>
●新卒採用活動への影響を懸念する企業は7割
●既に影響が出ている企業は8割、大企業・中堅企業では9割前後
●「採用スケジュールの遅延」への懸念が7割近く、中小企業はオンライン対応への遅れを懸念
●8割以上の企業が「一か月以上」の採用スケジュール遅延を予測
●大企業での対策の内容は「採用スケジュールの後ろ倒し」が7割、オンライン対応も

新卒採用活動への影響を懸念する企業は7割

 まず、「採用活動に関する影響の有無」については、「影響がある」が39%、「まあまあ影響がある」が30%となっており、これらを合計した「多少なりとも影響がある」(以下同じ)は69%と7割に上り、3月初旬に行った前回調査時よりさらに10ポイント増加となっている(図表1-1)。
企業規模別に見ると、大企業と中堅企業では「多少なりとも影響がある」がそれぞれ86%、82%と8割以上を占め、中小企業では53%と半数程度に留まっており、中堅企業以上に影響を受ける企業が多いことがうかがえる(図表1-2)。また、企業規模に関わらず、前回調査時より「多少なりとも影響がある」と懸念する企業の割合は増加傾向にある。

 数週間前までは、数か月程度で収束に向かうだろうと予測していた企業も、政府から「長期戦になる」との発表もあるとおり、今後、新型コロナウイルス感染拡大がいつまで続くか予測できない中、何らかの影響を覚悟せざるを得ない状況になっている企業の増加がうかがえる。

【図表1-1】採用活動への影響の懸念

【図表1-2】企業規模別 採用活動への影響の懸念

既に影響が出ている企業は8割、大企業・中堅企業では9割前後

 採用活動に対して「多少なりとも影響がある」とする企業の「影響の進捗度」について、「既に大きな影響が出ている」が27%、「影響が出始めている」が57%となっており、これらを合計した「影響が出ている」(以下同じ)が84%となっている。「影響が出ている」とする企業の割合は前回調査(73%)から11ポイント上昇しており、8割以上の企業で懸念していた影響が顕在化しているという深刻な事態となっている(図表2-1)。
また、企業規模別に見ると、企業規模に関わらず2~3割の企業で「既に大きな影響が出ている」としており、さらに、大企業と中堅企業では「影響が出ている」が9割前後で、中小企業でも8割近くを占めている(図表2-2)。

【図表2-1】「多少なりとも影響がある企業」における採用活動への影響の進捗度

【図表2-2】企業規模別 「多少なりとも影響がある企業」における採用活動への影響度の進捗度

 

「採用スケジュールの遅延」への懸念が7割近く、中小企業はオンライン対応への遅れを懸念

「多少なりとも影響がある」とする企業について「影響の内容」をみると、「採用スケジュールの遅延」が66%で最多であり、次いで「対面での説明会を開催できない」が54%、「合同企業説明会や学内企業説明会が中止」が48%などとなっている(図表3-1)。前回調査では、「スケジュール遅延」に次いで、「説明会への参加者の減少」や「問い合わせへの人的負担」の割合が多くなっていたが、実際に説明会から面接と選考工程が進む中、採用業務の執行自体に関わる影響を懸念する企業が増加していることがうかがえる。

 企業規模別に見ると、企業規模に関わらず「採用スケジュールが遅延する」が最多となっており、大企業では75%、中堅企業では73%、中小企業では55%となっている。次いで大企業では「対面での説明会を開催できない」(63%)、「合同企業説明会や学内企業説明会が中止」(48%)などと続いており、中堅企業では「合同企業説明会や学内企業説明会が中止」(59%)、「対面での説明会を開催できない」(55%)など、いずれも半数以上となっている。

 一方、中小企業では最多となる「採用スケジュールが遅延する」(55%)以外は「対面での面接選考が実施できない」が45%、「合同企業説明会や学内企業説明会が中止」(38%)などといずれも半数未満であり、大企業や中堅企業と比較すると各項目への懸念をする企業の割合が低いことがうかがえる。
ただし、「説明会や面接のオンライン化ができていない」については中小企業の割合が最も多く32%となっており、早急な対応の難しさと他企業に対する出遅れ感を懸念する中小企業の焦りが感じられる(図表10-2)。

【図表3-1】影響があると思う採用業務の内容

【図表3-2】企業規模別 影響があると思う採用業務の内容